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経済小説

飽くなき権力への執念 [50]
経済小説
2010年3月23日 10:07

野口 孫子

不祥事の多発 (5)

 法令違反による不祥事はいつ、何処で起こるかわからない。思いもよらないところで起こるものである。
 もし起こったら、大手企業、有名企業ほど大きく報道され、世間から叩かれ、多くは、市場から消えてなくなるほどの打撃を受ける。
 この数年、いろいろな業界の偽装事件がテレビ、新聞、雑誌で、お茶の間の話題にされ、倒産、事業廃止で市場から消えていったことは目新しいことではなかった。
 このように、不祥事は営々と長年築いた「一流という信用」が一瞬で吹き飛んでしまう破壊力を持っている。
 だからこそ、トップは自らを律して、「徳」を積まねばならないのである。幹部や社員はトップの背中を見ているのである。
 論語に「これを道(みちびく)に政を以ってし、これを斉(ととの)うるに刑を以ってしすれば、民免(まぬが)れて恥ずるなし。これを道くに徳を以ってし、これを斉うるに礼を以ってすれば、恥ずるありてかつ格(ただ)し」とある。
 トップが法律を振りかざし、刑罰をもって抑え込もうとしても、下役は法律の抜け穴ばかりをさがし、恥を恥とも思わない。徳を以て臨めば、礼により規律を確立しようとし、下役も恥を知るようになり、不正を働くものはいなくなると言っている。

 「俺は社長だから、自分だけは別だ」「自分は治外法権だ」との思い上がりが坂本にある限り、不祥事の温床はなくなることはない。まだ、大きなダメージを受ける不祥事に発展していないとはいえ、小さな事件の積み重ねで、大きな事件になっていくものである。
 しかし、山水建設が組織的で徹底的な原因究明を避け、担当個人の資質のせいにしているところに今後も不祥事が続発する予感がする。
 個人が利益もないところに、「なぜ、法令違反まで犯したのか」、「組織の中に、強権的無理強いがなかったのか」、「無理強いの原因は坂本社長以下営業本部長、支店長の無理強いが影のように付きまとっていたのではないのか」等々、「誰が悪いかを特定するのではなく、組織のシステムに問題はないのか」という視点で追及し、改善することあれば、実行すべきなのだが、役員、取り巻きは、坂本の顔色を見て、何もできず、結局は担当個人の問題として、決着させた。
 このことは山水建設の現在の能力、実力、理念が坂本を越えることはないことの表れでもあった。

(つづく)

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