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経済小説

飽くなき権力への執念 [54]
経済小説
2010年3月29日 10:47

野口 孫子

開発事業の破綻 (3)

 坂本は中村を完全に無視し続けた。
「もう、お前なんか、相手にせず」
 という態度があからさまだった。そうなると、他の役員も中村と話をしなくなった。なぜなら、中村と親しく話をしていることが坂本にわかれば、中村と同じ考え、思想の持ち主と見られ、「自分に反旗をひるがえす予備軍」として、次期役員改選期では「更迭」を覚悟しなければならなかったのである。そのため、誰も中村に近づく者はいなくなり、中村は、四面楚歌、村八分状況になってしまっていた。

 日本国内ではサブプライムの影響で、地価が下がり、開発事業は頓挫していた。そのようなときに、志村証券会社の紹介で、ロンドンのUBB銀行から、話がもちこまれた。
「アラブ首長国のドバイは建設ラッシュに沸いている。これからも、多くの超大型プロジェクトが目白押しだ。開発事業で成功している山水建設もドバイに打って出てはどうか」
 というものだった。
 ドバイでは、超高層ビルが設計段階から各階の部屋が世界中の投資家によって買われ、工事中の段階で20%も値上がりし、それを転売することで利益を出していく。完成の時点では、さらに30%も値上がりしているという状況を呈していた。中東アラブの石油の値上がりで、ドバイの建設投資に資金が湯水のように流れ込んでいた。原油価格もバーレル148ドルの史上最高値をつけていた。
 国内で頓挫していた開発事業の経験を、ドバイで活かせると思った坂本は自分の直轄として、「国際部」を本社に新設して、「ドバイの調査」を命じたのである。また原油の値上がりで好況に沸いている「ロシアも検討せよ」と同様に命じたのである。
 NHKでも放映されたように、ドバイは沸騰都市と化していた。超高層ビル、超高級ホテルなどが建設前から投資の対象になり、飛ぶように売れ、しかも、値上がりを続けていた。
 坂本はこれで国内の開発事業の低迷を一挙に払拭できると豪語していた。
 いよいよ本格的に、ドバイ参入という段階になり、「リーマンブラザース破綻」というニュースが飛び込んできた。

(つづく)

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