~厳しさを増す業界環境
管工事業界は主に、ビルやマンションなどの箱物の空調・吸排設備工事を取り扱う業者と、ライフラインでもある地中の配管工事を手掛ける本管工事業者とに大別される。過去には棲み分けが行なわれつつも、他業種と違って福岡地区では協力会が1つであり、公共工事受注においてもいくぶん平穏な状態だったと聞かれる。だが、地方自治体を中心とした公共工事の抑制政策や発注方法の変更で、業者間での激しい価格競争が勃発。民需の減少もあって、業界全体が厳しさを増している。現状を含めた管工事業界を検証してみる。
<公共工事主体で 事業が展開できた時代>
戦後、急速に復興を遂げようとしていた福岡地区において、まずはライフラインを確保することが重要な課題であった。そのひとつである「水道」を確保するための本管工事は、復興とともに増加していった。当時、地中に敷設される本管工事は、主に土木工事業者が施工していたようだ。しかし、現在では発注区分の変更に伴い、管の直径300㎜を境として、300㎜以下を本管工事業者が、それ以上を土木工事業者が工事を担当するようになっている。一方で、急速に発達する都市圏において、マンションや商業ビルに欠かせない空調設備や吸排設備といった設備工事も管工事に分類されるようになり、発展する建設業にとってなくてはならない存在となった。
福岡地区においても、本管工事業者に対して設備工事業者の比率は高く、民需での受注はともかく、過去においては公共工事の受注で利益を出していたことはたしかであった。
福岡では管工事業界の協力会が分裂せず1枚岩であったことが業者間の結束を強くし、厳しい市況をすり抜けたとも言われている。
たとえば、箱物と言われるマンションや商業ビルなどの建物の設備を手掛ける設備工事業者が本管工事を受注した際には、一定の比率を設けて本管工事業者に下請けに出すほか、福岡地区において各東西エリアに進出しないなどである。ある程度の棲み分けを行なうことで、無駄な競争を避けていたようだ。
ある設備工事業者は、「過去は、公共工事だけで飯を食っていけた。年に数回(公共工事を)受注すればそれでよかった時代があったのです」とコメント。とくに設備工業者にとっては、いわゆる箱物の工事を受注したならば、約20%の粗利があったとされる。それが公共工事であれば、さらに高い利益率を確保できたのではとの想像もされる。管工事業者にとっても、古き良き時代であったかもしれない。
【道山 憲一】
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