<入札方法の変更>
何ごとも右肩上がりのままであれば波風は立たず、今まで通りに推移していたかもしれない。しかし、地方自治体の多額の負債が納税者の見方を変えた。10年くらい前から名前が浸透し始めた「市民オンブズマン」の台頭である。
たしかに納税者側としては、本当に税金が正しく使われているのかどうかについて、疑問がわいてくるのは当然のこと。その自治体が借金まみれであるならば、なおさらである。そのため、「市民オンブズマン」を中心に地方自治体主体の各公共工事に対して、それが適正な価格だったのかどうかの情報開示を求め始めた。積算から受注のやり方などの建設業を中心とした旧態依然の受注方法は「談合」という名のもと見直され、業者を指名する「指名入札競争」や、資格を持てば誰でも参加できる「一般競争入札」、最近では大型公共工事中心だった「総合評価方式」での発注に移行しつつある。
管工事業界でもその例には漏れず、公共工事抑制の動きや厳しい競争入札で受注が困難になり、利幅も厳しくなっている状況にある。さらに、マンションや商業ビルの箱物建設が大きく減少したことで、民需による受注減が表面化。公共工事の減少も加わり、ダブルパンチとなって設備工事業界は厳しさが増している。
<競争激化で叩き合い>
【表】をご覧いただければわかるように、最近の福岡市の入札結果では、最低価格での入札が多くなっている。この傾向はとくに今年に入ってから表面化しており、業者の間では「公共工事はくじが当たり前」とも聞かれる。
「設備機器を自前で持つ本業の本管工事であれば、最低価格でも少しは利益が取れるでしょうが、設備業者が本管工事を取っても利益は期待できない」、「利益が取れません」と業者は答える。 原油価格の高騰による資材の値上がりに加え、前述した公共工事における競争の激化、さらには市況の冷え込みによる民需の後退など、管工事業界を取り巻く環境には厳しいものがある。
【道山 憲一】
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