会社は、いつも成長を求められている。株主は5%成長、7%成長と求めてくる。株主の意向を伝えてくるのは、証券会社や金融市場の人たち。このアナリストと言われる人たちの希望と期待には、添わねばならない。このアナリストが否定的な評価を出し始めると、会社の市場価値は下がり、格付けの低下で資金の手当ても難しくなって信用不安を巻き起こしてしまう。
現実は、理想通りに右肩上がりの成長を毎年続けるのは大変なことである。アナリストは厳しく成長の結果を求めている。それに対して経営トップは、つい希望を込めて甘い数字を発表してしまう。
しかし、これが会社としての世間に対する約束なのである。
その片方では、役員や幹部は殊勝にもトップが言った数字を守ろうと、無理にでも実現しようとする。
決算は、無理に背伸びをしてしまうこともあるのである。だが、無理に無理を重ねると、粉飾まがいの決算要因を抱え込んでしまう。無理をすることもこの不況の時期には必要なではあるが、行き過ぎた無理は会社の存続を危うくしてしまう。
トップの希望的数字が一人歩きしないよう、細心の注意が必要なのだ。
ワンマンなトップがいる会社ほど、危険が大きいと言わざるを得ない。会社のトップは常に、長期的、持続的に成長できる基礎を作って、支え続けなければならない。高い志を持って、会社を運営せねばならない。自分の名誉欲、金銭欲など、自分本位で会社を運営してはならない。トップは高い教養を身に付け、社業以外の世界中のありとあらゆる事象に目を向け、社会正義を有した心を持つように、鍛えておくべきである。
積水ハウスを引っ張っていく会長や社長は、たとえどんなに高い志を持っていたとしても、それが高すぎるということはない。この高い志のあるトップのリーダーシップから、幹部や社員はエネルギーを授けられ、会社の理念、成長のプランが生き生きと躍動するものである。
会長や社長は偉いのである。好きなことができる。誰も文句は言わない。
しかし、みんな呆れてお世辞だけ言っているのかもしれない。それに気付かず「裸の王様」になっていると、ある日突然役員会で解任動議が出されるかもしれない。
日々改革を行なっていくのは会長や社長であり、それを行なえるかどうかは、高い志の有無にかかっていることを忘れてはならない。
【野口 孫子】
※この連載は積水ハウスに対してエールを送るものであり、誹謗中傷を目的とするものではありません。
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