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企業、人 再生シリーズ

黒木透・再生への道(49)
企業、人 再生シリーズ
2010年4月 6日 10:56

<総会屋への利益供与疑惑>

 福岡からの不動産企業としては2000年のディックスクロキを皮切りに、翌01年にはアパマンショップが、02年にはシノケンが、それぞれ株式公開を成していた。ディックスクロキも福岡唯一の公開企業という地位に安穏としてはいられず、矢継ぎ早に手を打っていた。追いつかれることがないように、先手先手と打ち続けた結果、マリアクラブ跡地の開発を手がけるようになり、その経験が大型物件受注という大きな果実を得ることができたのだ。後発企業もディックスクロキの成長に欠かせない存在だった。まさに切磋琢磨である。お互い高めあう努力を怠らなかったのだ。

 2005年ごろの黒木の一日は次のようなものだった。朝は8時40分くらいに出社し、秘書にスケジュールを確認する。午前に一回、午後に一回会議をこなし、現状の確認と問題点の点検を行なう。陽が暮れると毎日、接待で呼ばれて中洲に繰り出した。週に一回、取締役会が開かれて今後の見込みなどが話し合われた。そんな毎日を繰り返していたのだ。すでに個々の案件で黒木が直接指示を出したり、顧客と折衝をする機会はなくなり、社員や各取締役がその職能において仕事を進めていた。

 そんな中での黒木の仕事は、社の体制を検(あらた)めてどこに注力すべきかを決断したり、利益率を計算したりといった、大きくなった会社の頭脳として大まかな舵をとるものになっていた。

 黒木の新たな仕事スタイルが確立された頃、それは突然やってきた。福岡県警の取調べである。以前の取調べは根も葉もないものだったが、今回は違った。株式公開企業特有のものだったのだ。

 総会屋への利益供与。法人としてのディックスクロキにかけられた容疑である。県警に詳しく話しを聞いてみると、次のようなものだった。ある総会屋がディックスクロキの株式を保有していた。それにもかかわらず株主総会などが荒れることがないのは、何らかの利益を供していたはずだ、と言う。黒木には身に覚えがない。というのも、利益供与を強制されたり、脅されたりといったことがなかったからだ。黒木は取締役を集めて事情を聞いた。

(つづく)

【柳 茂嘉】


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