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経済小説

飽くなき権力への執念 [57]
経済小説
2010年4月 1日 11:04

野口 孫子

社長交代 (3)

 坂本の思惑通りに事が進み、株主総会は20分で終わった。
 新体制のスタートに当たり、新会長CEO、新社長COOの所信表明が全国の幹部会で行なわれた。参加者は「どんな変化があるのか」と密かに期待をしていた。
 しかし、内容は今までと同じだった。
 坂本新会長は、任命されたばかりの斉藤新社長を差し置いて、
「既存の事業の拡販」
「経費節減」
「環境対策の取り組み」
「不況はチャンスととらえよ」
 等、滔々と長時間訓示をした。

 斉藤新社長はもう何も言うことはなくなっていた。業務執行の最高責任者である社長として、現業についての方針、指示を出す場であったのだが、会長がすべてを発言してしまい社長として、喋ることはなくなっていた。
「風通しの良い組織に変える」
「コンプライアンスの遵守」
「皆は運命協同体」
 としか言いようがなかった。
 この2人のデビューを見て、皆は「今までと変わりがない。坂本が全てを仕切っている」とはっきり理解したのである。
 坂本は「俺が今までと変わらず、権力を持っているから、従えよ」という「演出」に成功したのである。坂本の権力への執念はすさまじいものがある。権力にはよほど「甘い蜜」があるのだろう。
 斉藤社長の登場で、社内の雰囲気が変わることを期待していたが、何にも変わらず、坂本の独裁体制が続くことになった。
 新体制になっても、盛り上がりはなく、開発事業の悪化状況は続き、既存事業もじり貧の状況を呈していた。不動産事業(以前に完全子会社したもの)だけが何とか、気を吐いていた。
 新社長の経営方針等の「顔」がまったく見えないのである。
 斉藤は坂本の言いなりで、「小間使いをしているのではないか」と思えるくらいだった。
業績の見通しも立たず、打開策も打てず、過去の成功体験を思い出し
「わが社は社員の団結で、幾多の危機を乗り越えてきた」
 と冷え切った社員に鼓舞することしかできなかった。
 そこに、「リーマンショック」が襲ってきたのである。

(つづく)

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