上限金利の見直しが、零細金融にとっての繋ぎ資金を工面するノンバンクを潰している。最高裁判決でグレーゾーンの金利が否定され、過払い返還請求は日常のこととなった。おかげで消費者金融は業界ごと壊滅寸前。大手のなかで銀行系とつながっていない唯一の雄である武富士が、資金繰りから営業債権の売却と本社不動産を売却しようとしている。現在、格付CCの武富士。ひとつ間違えば管理ポスト行きで、上場廃止もありうる未曾有の危機を迎えている。
2007年創業者ドン死亡―2009年末から加速した終末までのプロセス
2009年に窓口での貸し出しを停止している武富士。07年に業界のシンボル的存在であった創業者・武井保雄氏を失い、経営はさらに悪化。08年に株価変動に対応する前倒し返済型の転換社債を発行したが、株価下落が止まらず巨額の前倒し返済を6月に控えている。
6月には最大約700億円の返済予定で、交渉の結果、約250億円減額した。(※注・09年12月・116億円分前倒し返済。33億円分を減額し残額約101億円分を10年7月から毎月10億円ずつ分割返済する)。
危機を乗り切るために債権の売却を進め、一方では不動産を担保に資金繰りも検討した。しかし、2010年に入って様相は一変。すべて宙に浮き破滅の道をひた走る姿勢に変わったと社内から悲鳴があがっている。
金融庁は武富士が売却準備した債権の内容に注目している。
「武富士は4月末、6月末に資金が必要。締め切りが二回ある。目に見えない債権ばかり売っていないで、目に見える不動産をもとに資金繰りを、と指導した。そこで、不動産を担保に資金を借りようとしたのが最初。それが、年が変わって2010年には一気に売却に出ようとした。その上に債権売却を準備していて、その債権には問題がある可能性を把握している」(金融庁関係者)。
3月23日に債券売却のための価格提示入札を行なったときの債権の内容が問題だというのだ。つまり、134億円の債権の売却を目指して入札させたが、そこに90億円分、簿内の過払い対象債権、つまり和解していない過払い請求がくるであろう債権が含まれていたのである。
3月23日の入札は未決定のまま、簿外債権も簿内債権も過払い対象債権も土地・不動産もすべて売却ということでは、会社を終息にむけて舵取りしているということだと、武富士幹部もアドバイザーで入っているトレーダーズ証券の関係者も証言する。
その証拠が不動産である。4月2日の役員会で武井健晃副社長が不動産の売却を承認。「土地は絶対に売らない」という武富士創業者一族の定説は覆された。
債権売却は宙に浮き、いまだ決定を見ていない。
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