新聞発表の資金繰りには実体がついてこなかった
清川昭社長が行なった4月15日の報道発表は、武富士には資金があるという内容だった。
要点をまとめると、「6月末には資金準備が必要だが、3月末の預金は600億円弱で、ほかにも合計150億円程度の新規資金調達のメドを付けており、準備は大体できた」という内容だ。
しかし、この発表も問題がある。この発言に現在の段階では「実体がない」として指摘するのは、武富士のアドバイザーだ。
外資のカーバル・インベスターズ・ピーティーイーリミテッド(以下、カーバル)が入札して価格提示していたが、売却に至らなかったというのだ。カーバルはアメリカの中央情報局=CIAのダミー会社として知られる世界最大の農産物貿易商社カーギルの金融部門。日本支社は不良債権なども扱っているが主に不動産投資ファンドの企業である。
「武富士はカーバルに簿外債権の約4000億円を買わせるという入札をさせました。提示価格は150億円。しかし決定はしませんでした。新聞発表の段階では、カーバルからの150億円を根拠に準備資金はあるという印象でしたが、これはもうありません。発表があったその日のうちに、キャンセル状態になっています。資金準備ができたという発表だけ出て、現実化していないのは遺憾としか言いようがない」(武富士のアドバイザー関係者)。
売却リストが流出・本社売却も検討
債権の売却で過払いを含んでいた問題と並行して、不動産売却でも問題が起こっている。
不動産買収の入札業者は判明しているだけでもR&R、ローンスター、モルガンスタンレー、ゴールドマンサックス、バークレー。4月19日から26日までに価格提示(入札)が行なわれ、28日には開札があると予想されている。
しかし、リストはとっくに流出しており、外資が懸念する不動産が含まれていることが問題として、彼らの共通の話題に上ってきている。
「買っても売れないであろう不動産が含まれています。またコンプライアンス上問題の物件もあります。それは本社ビルや麹町の物件、京都の土地です。実際に、本社ビルは売りにくいです。また、指定暴力団が入居している物件もあります。退去してもらうのに大金を払えば、暴力団の資金源を供与したということになるわけですし、そのままでも絶対に売れないでしょう。2つの流出したリストには、全国で28件ある不動産のうち11物件、または8物件の本社ビルを含む問題物件が入っています」(バークレー関係者)。
契約書には、入札参加の条件として不動産に「たとえ瑕疵があっても一切、関知しない」という条件が明記されているという。「瑕疵」の意味には、暴力団事務所の入居も含まれるということだろう。入札参加は清川・武井両氏の了解を得た企業だけ。上場企業に求められる公開性、公平性はそこにはなく、さらに北米型のNDA(秘密保持契約)を結ばせるなど、顧問で武井健晃氏の片腕、川島亮太郎氏の影がちらちらと垣間見える。
「本社の土地建物を担保に金を借りるのならば分かる。しかし、売却となったら、終わりではないですか。また、不動産取引は武井一族の了解なしには進まない。代表取締役は清川昭社長と武井健晃副社長ですが、責任はすべて副社長と一族です」(武富士幹部)。
リストはまとめ売り=バルクセールのような内容である。不良債権の土地をまとめてバルクセールという方式はアメリカの不良債権処理の方式のひとつである。どうも、ファンドや不動産証券化などに詳しい人物が知恵をつけている可能性が高い。
「どれも動かせない物件ばかり。買ったとしても塩漬けになるのではないでしょうか。その間に社債、つまり家賃収入などをもとにしたノンリコースローンの債券を発行し、生命保険などの投資家に買ってもらってまわしていく。地価が上がったら利潤追求で売却することを考えているのかもしれません。これは、およそサラ金の社長には考えつかないような証券化などのテクニックです」(武富士に詳しい業界紙)。
やはり顧問・川島亮太郎氏の存在は大きいという。
川島氏は清川社長に一時、排除された。富士通の野副社長への批判がそのまま飛び火したもので、排除理由は「反社会勢力との癒着」という報道だった。
「2009年末の債券売却は川島氏の仕事でした。一時は干されていたものの、すぐに不動産売却の話で復活し、今や副社長は彼の言いなりです」(前出・武富士幹部)。
川島氏は入札において"企業側の窓口"と言われている。
「住友商事が入札に参加させてほしいという申し入れを、断ったと聞いています」(前出・武富士幹部)。
国内企業の参加を断り、外資のハゲタカを紹介、武富士という"国産の巨象の肉"を提供している、社員たちは事態をそう読んでいるという。
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