21世紀に入り、上海など沿海部大都市をはじめ、中国は日進月歩で著しい発展を成し遂げる一方、大学生の就職は益々困難な状態に陥っています。2009年7月1日までの統計では、全国の同年度大学新卒者の就職率が68%で止まりました。ちなみに中国の大学は7月に卒業となります。
経済発展でより多くの求人が創出されているのに突然の就職難。大学生やその家庭にとって、思いがけない事態です。
表面的かつ大きな要因としては、毎年大卒の人数が急増していることが考えられます。01年における全国の大学新卒者が114万人だったのに対し、09年では、その数字が611万人に達しました。10年では更に20万人近く増えるとの予測です。一方、01年から09年までの間、中国の年間GDP平均伸び率は10%台でした。明らかに、大卒者の供給と経済発展による人材需要の間でバランスが取れていません。また、供給が需要を大きく上回る傾向は、しばらく続きそうです。
無計画と思えるほどに、ここまで大学生の人数が増えたのは何故でしょうか。結論から言えば、親たちと大学側の双方が影響し合うことで、この状態がもたらされたと言えます。
1990年代は、大学生の人数が全国的に少なく、そのため、政府機関や国営企業や民間会社も大学生を重宝し、かなり優遇していました。そのことに羨ましいイメージを受けた親たちは、何とか頑張って自分の子を大学まで行かせたいと考えました。特にブルーカラーの労働者にとって、自分の子から大学生を出すことは、家族や親戚に繁栄をもたらしてくれると認識していたのです。
一方、中国の大学はほとんど公立であり、毎年募集できる定員は大学の規模によって決められています。その枠組みに従って、各大学が国から運営費用をもらうのです。しかし、国から交付されるお金は大学側の希望よりはるかに下回っていました。大学側にとって、科学研究、教職員の待遇改善から学校の更なる発展まで、資金投入がなければ着手できず、持続的な運営もなかなか難しいものです。いかに努力して収入を増やすか、考え続けていました。
「大学に進学したい」という強い要望がある生徒側と増収増益を強く望んでいる大学側。政府は、両方の声を取り入れ、大学教育の改革に踏み切ります。各大学が募集人数を大幅に増やし、授業料をあげることが許可されました。いわゆる『大学教育産業化改革』です。広大な国において、各地にいろんな複雑な事情があり、かつマクロコントロールがうまくいかず、進学生徒の人数が爆発的に増える一方、雇用の受け皿を十分考慮していなかった結果、現在の大卒者の就職難があるのです。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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