実際、今回の口蹄疫被害に見舞われ一番被害の大きかった宮崎県児湯郡川南町の牧場関係者に話を聞くことができた。そこから出てきたのも各所との"温度差"であった。「政府や行政サイドにはいち早く着手して欲しいのに腰が重い。牧場主たちは精神的にも限界にきている。早くなんとかしてほしい」と悲鳴を上げても、国や行政サイドからは何ら説明がないまま、報道だけが先行する状態がしばらく続いたという。「口蹄疫は１日で何万も拡大する伝染病。豚は牛の1000倍の感染力を持っているので、特に拡大のスピードが早い。1日も早く殺処分して、感染拡大をいち早く食い止めなければいけないと我々は日々、訴えてきましたが、重い腰を上げてくれませんでした」と関係者は語る。
　取材を終えた21日の夜、宮崎県をはじめ関係自治体の首長らが会合を行い、発生農場から半径10キロ圏内の牛や豚の全頭ワクチン接種が決定し、翌22日よりワクチン接種がスタートした。4月20日の口蹄疫感染報道から1ヶ月以上経過後のことである。「現在、処分場候補に上げられている所が住民の反対により埋め立てできなくなっている。よって早急に埋め立て可能なのは畜舎内に穴を掘るしかないんです。土地の確保に周辺の理解を得られないのは残念です。ですが、口蹄疫の影響で地元・川南町の経済はストップしつつあります。川南町は、これらの農家が建設業や小売業を支えてきた。うちの地域は関係ない、業種的にも関係ないではなくて、決して対岸の火事だとは思わないで欲しいんです」と関係者は切実に語った。

（つづく）

【矢野】

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