<本特集について>
2010年4月19日(月)、NetIB-NEWSは「激変時代の日本 地域自立の新ビジョン」シンポジウムをアクロス福岡にて開催しました。本記事では同シンポジウムのなかから総務省顧問・山﨑養世氏による講演内容を一部抜粋して紹介します。
供給者主体の政治を脱却
だけど、そのときに邪魔なものがいくつかあります。高速道路を無料にするといったら反対する人が多いですね。だけど、日本の国土の8割は車しかないところが多いのです。福岡市だったら車以外もありますが、たとえば佐賀県は車しかありません。淡路島に行ってみてください。人口が14万人しかいない過疎地ですよ。大阪からも近く最高の条件であるはずなのに、なぜ最悪の条件のシンガポールは同じ面積で日本よりも豊かなのでしょうか。
人間の知恵、頭脳を働かせて、大きい才能を集めて起業家や学者が成功している国家がシンガポールです。広さは淡路島とあまり変わらない700k㎡ですが、条件は劣悪です。戦争が頻繁に起こり、水が少なく、熱帯で孤立しています。その国が今では人口400万人、1人当たり所得が5万2,000ドルです。日本が3万3,000ドルですから、日本よりも良い。
これは政策の違いです。淡路島には鉄道がないのに高速道路を無料にするといったら、JRが困るからといって反対する。四国は97%が車です。JRは3%しかないのですよ。それでも関係ない。JRやフェリーが困るから無料化に反対する。
それは供給者主体の政治ではなかったのか。消費者と国民・住民本位の地域主権が本来の政治で、国民が困ることは解決しないのですか。そういうことをしている限り、世のなかは何も変わりません。
神戸から淡路島は4㎞も離れていないのに、橋は片道2,800円、往復5,600円です。誰が使いますか。徳島まで行ったら5,000円も取られます。住民が普通に使えるわけがないのです。だけど関門海峡だと、なぜ片道350円なのか。おかしいですよね。JRは基本料金で、橋を渡ろうが同じ1㎞で計算しているでしょう。
一流の国家でいてほしい
今回も財源がないと言っていますが、6,000億円あった財源を1,000億円に削り、しかもまた値上げする。ちょっと待ってくださいよ、と。もともと国土交通省は1兆円の公共事業を削りました。しかも6,000億円を1,000億円にしました。片方で暫定税率2兆5,000億円を車利用者が納税するのですよ。高速道路を走ったって、ガソリンを使えば税金を使うでしょう。半分は税金ですから。高速道路に乗った人は、毎年1兆3,000億円の税金を払っているのです。それが今まで一般道路を作るのにすべて転用されてきたわけです。
暫定税率を2兆5,000億円も取るのであれば、せめて5,000億円を使って財源を6,000億円に戻したらどうなりますか。全国の高速道路の8割は無料にできます。大都市のなか、たとえば首都高や東名、名神などは有料でいいですよ。長さは2割だけど、料金収入では全国の半分です。財源は6,000億円で済むのです。
こんな当たり前のことが実行できなくて、何が財政再建ですか、経済活性化ですか。地方活性化、地域主権、道州制、みんな美しい言葉は好きだけれど実行するのが嫌いな人だらけです。人の足を引っ張り合うのが好きな人がそろっている。これでいいのですか。我々の祖先は黒船が来たときに変わったじゃないですか。焼け野原にされたあと立ち上がったじゃないですか。我々も少し、それくらいの勇気を持ったらどうでしょう。私はそう思います。
私は相変わらず一市民です。昔はゴールドマン・サックスの社長もしていました。日本の年金、郵政、簡保、このままでは破産すると思いました。だから、今やっているのは恩返しのつもりです。子どもたちのため、孫たちのため、そして自分が死ぬときにも日本には一流の国家でいてほしい、そう思って活動しています。
そういう意味では、民主党も目覚めていただきたい。そして何よりも、福岡・博多が東京を抜いて日本一の国際都市になってほしい。アジア都市の中心となって、国がついて来られないのなら、ひとりでもやってやるというような、そういう街になってもらいたいと思います。
【山﨑 養世(やまざき やすよ)】
1958年生まれ。福岡市出身。東京大学経済学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)取得。大和証券を経て、ゴールドマン・サックス投信社長として同社を外資系トップの投信会社に育てる。ゴールドマン・サックス本社パートナー(共同経営者)等を歴任。02年、同社を辞し、シンクタンク山崎養世事務所を設立。金融・財政・国際経済問題等の調査・研究、政策提言を行なう。09年10月、総務省顧問に就任。09年12月成長戦略総合研究所を設立、理事長に就任。
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