◆鳩山首相に「小沢切り」を迫る前原、枝野
鳩山政権はもはや"風前の灯"のように見える。
まず米軍・普天間飛行場の移転問題が5月末までに解決できなければ、鳩山首相は政治責任を問われる。「基地一ヶ所の引越しが果たして政権を揺るがせるような問題なのか」鳩山側近は候補地選びが八方塞がりに陥っていることに今になって臍を噛むが、そもそも自民党政権下で14年間かかった普天間の代替地選びを「半年間で解決する」と期限を区切ったのは鳩山首相だ。自ら墓穴を掘ったに等しい。しかも、鳩山首相の後ろ盾である民主党の最高実力者、小沢一郎・幹事長は政治資金疑惑で検察審査会から「起訴相当」の審判を下され、こちらも窮地に陥った。
民主党内には、トップ2人が身動きとれないのを好機と見て、一気に"反小沢クーデター"を起こそうという動きまで始まっている。前原誠司・国土交通相、枝野幸男・行政刷新相らが公然と小沢氏の"自発的辞任"を求めているのがその第一歩だ。
民主党反小沢グループの議員は「鳩山首相は普天間問題が解決できなかった場合、小沢幹事長を更迭することで政権浮揚を図るしかないのではないか」と、今後の展開を次のように予測して見せる。
「後任の幹事長に小沢の傀儡を据えたのでは党を改革できない。仙谷由人・国家戦略相を幹事長に回し、普天間の混乱を招いた平野博文・官房長官を交代させるなど大幅な内閣改造が必要だろう」。
反小沢派は求心力を失った鳩山首相の足元を見て「小沢切り」を迫り、一気に政権と党の権力中枢を握ろうという作戦である。鳩山内閣の支持率急落の原因を小沢氏の「政治とカネ」の問題だと見て責任を負わせ、幹事長交代・内閣改造によって局面打開をはかり、参院選前に支持率を上向かせようというのだ。
しかし、そのこと自体、この党の未熟さを物語っている。
支持率低下の最大の原因は「政治とカネ」の問題などではない。鳩山政権が国民に「政権交代によって政治が変わった」という実感を与えていないことが理由だろう。鳩山首相の普天間移転公約をはじめ、前原大臣は「ダムは造らない」と八ツ場ダムの中止を打ち出しながら、実際は工事を続行させているし、高速道路の無料化も反故にした。長妻昭・厚生労働相も公約の後期高齢者医療制度の廃止を先送りしている。
国民は、たとえ困難でも、民主党政権にはマニフェストを愚直に実行するのだという気概と姿勢を期待したのだ。どうしても無理であれば国民に説明して理解を求めるべきで、国民は努力が足りなければ"もっとやってみろ"といえる。それが「政治が変わった」という実感につながるはずなのだ。しかし、民主党政権は国民にはっきり説明をしないまま公約をなし崩しにしたうえ、早くもマニフェスト見直しの議論をはじめたではないか。改革への逃げの姿勢は鳩山内閣の閣僚1人1人の責任である。そうした民意を理解しないで内閣改造や小沢辞任で批判をかわそうということ自体、党内で責任をなすりあっているにすぎない。
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