<雇用の場の減少>
私は、当社名の由来ともなる「地域づくりにマーケティング発想を!」を旗印に、各地の地域づくりのお手伝いをさせていただいております。
この欄をお借りして九州各地の地域づくり、まちづくりの現状や地域の課題、問題点、悩み、さらにはその将来像、これに対する国の支援策などについて、その一端をお話してみたいと思います。しばらくお付き合いをいただけたら幸いです。
自治体の総合計画の作成、平成の自治体大合併の際の新市(町)建設計画、いわゆるマスタープランのようなものですが、これらの業務策定にあたって、よく市民・住民の意識調査を行ないます。その際に多くの地域で出る問題が「若者の働く場がない」、いや、いまや、中高齢者も工場の閉鎖や海外移転により、「働く場がない」というものです。
以前なら、そう、1980年代頃くらいまではそういう地域でも工場を誘致しよう、ということで広大な工場団地を整備して工場誘致に努めたものです。各地で工場の争奪戦が起こったのもこの頃だったでしょう。しかしながら、プラザ合意による円高などにより、当時「世界の工場」として急速に台頭した中国などへ国内工場は移転を始めたのです。いわゆる「国内経済の空洞化」ということが盛んに言われ始めた頃です。
しかし、国内は1990年代に向かって、不動産投資などで異常な地価高騰を招いていました。いわゆるバブル時代です。この頃は、87年制定のリゾート法などにより日本各地ではリゾート施設の整備に熱をあげ一大リゾートブームが湧きあがりました。しかし...、結果はみなさんご承知の通りです。廃業、縮小により「働く場」も少なくなってきたのです。リゾート、レジャー開発も雇用の場の拡大には大きく寄与しませんでした。そのうち、バブル経済も破綻しました。以来、「失われた20年」ともいえる経済停滞時代が続きます。
この間、批判はあったもののあの手この手で公共投資のバラまきが進みました。しかし、これも「しかし」です。小泉構造改革以来、最近の「事業仕分け」にもみられるように、公共投資は減少する一方です。筆者のところに建設業の経営多角化の相談が増えたのもこの頃からで、確実に雇用場の減少・縮小が進みました。
<地域の対策>
このようななか、総合計画や新市の建設計画を作成するにあたってのコンサルタント業務では、地域活性化の発想の後押し役(ファシリテーション)を求められるのです。
ある地域での会議のときでした。自治体の企画担当者と前夜から合宿形式で議論を進めておりました。その2日目のことです。議論が煮詰まるのです。そこで、意見を求められた私は、皆さんの前で「産業創造」とボードに大書しました。「地域のみなさんが、働く場所がない、高校生などは働く場所があればここを離れたくない、と言っているのでしょう?」そう言ったのです。自治体のみなさんの反応は、「そうよねえ。でも言ったらやらんといかんもんねえ......」。
そうです、みなさんわかっているのです。雇用の場が地域に必要なことが。でも、言えないのです。雇用の場の創出の方法、何をやればいいのか、どうすれば企業が来てくれるのか...。
さあ、ここからが問題です。この続きは次回にお話ししたいと思います。
(株)地域マーケティング研究所
代表取締役 吉田 潔
福岡市中央区天神4-9-10 正友ビル5F
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