<地域の内発的な発展>
地域において、いかにして雇用の場の確保を行なうのか。それが問題です。
たまたま、昨日あるところでの古本市で「地域主義のすすめ―住民がつくる地域経済 」(1976年、杉岡碩夫著、東経選書)という本を見つけて、懐かしさのあまりしばらく立ち読みしたのですが、昔、そう今から34年前ですね、その昔によく読んだ本です。この本とともに「地域主義の時代」(78年、清成忠男著、東経選書)などもよく読んだものですが、私の知る限り地域の内発的発展という言葉を使われたのがこの清成忠男先生(元法政大学総長、ベンチャー・ビジネスという概念を提言したことでも有名)だったと記憶しております。
地域において内発的な発展策がいかに大事か、このことが30数年前から叫ばれていたのです。地域主義、地域における内発的な発展こそ雇用を拡大する決め手という考え方です。
70年代の後半にこのような地域主義、地域からの内発的発展が叫ばれ始めたのには必然性があると考えています。そのきっかけは、73年のオイルショックです。オイルショックによって、それまで湯水を使うような消費に走っていた我が国の消費者は、はたと気づいたのです。資源は有限だ、地球環境は守られるべきものなのだ、と。
ちょうどその頃、「ライフスタイル」というマーケティング用語が定着し始めました。この概念もアメリカから伝わってきたわけですが、企業がマーケティング展開を行なうに当たって、消費行動や意識を把握する際に、従来からの性別や年代別といったデモグラフィック要因(人口学的要因)だけでは消費行動を捉えきれなくなったのです。生活の価値観、行動様式、趣味・嗜好性などさまざまな要因によって消費者を捉えようとする試み、その一端が消費者のライフスタイルという言葉で表されるようになったわけです。
消費者が地域の資源や歴史を見つめ直し、その生活のあり方自身を考え直す。このこと自体が地域主義、というわけです。さらに、これを推し進めることが「地域の内発的な発展」につながるということになります。
結果的には、この考え方は40年近くにわたって延々と続いています。今、地域においては、その資源や歴史や風土の見直しによって新しい価値観を生み出そうとする努力があちこちでなされています。地域の資源を活用した内発的産業の振興、すなわち「地域の自立」が図られねばならないのです。
<地域資源活用のプロセス>
このような地域資源活用のプロセスについて、以下少しお話します。
(1)まず、地域資源の洗い出しを行なう作業が必要です。埋もれた資源、地域の人が日常接していて当たり前と思っている資源でも他の地域(都市部の住民など)にとって、とても貴重で珍しいもの(コト)が多いケースがよくあります。
(2)そして、その地域資源の評価・絞り込みを皆さんで検討します。この際に大事なことは、その資源(商品、サービス、景観など)の基本的なニーズやターゲットとする市場セグメントにおいて消費者のウォンツにかなっているかを調査したり、肌で感じたりすることです。要するに、売れる商品・サービスを見つけ出すことです。
(3)次に、絞り込まれた商品の商品化の戦略立案が必要です。セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングといった検討作業が必要です。何を、どこに、誰に、どのようにして売り込むか、のプランニング作業です。
(4)そしていよいよ、最後の具体的商品化作業に入ります。誰が、どこで、どのようにして作り、そのような流通に乗せて、どうやって運びこむか。PRまたは広告は、どのような手法によるかなどを検討して、いよいよ市場に登場というわけです。
つまりこれは、マーケティングの視点そのものです。マッカーシーのいうところの4P=Product(製品戦略)、Price(価格戦略)、Place(流通戦略)、Promotion(販促戦略)を使ったマーケティング・ミックスの展開です。
ここまでは、理論通りのお話ですが、「言うは易し、行なうは難し」です。
次回以降は、これらの理論に基づいた(結果的に基づいたといってもよい)事例、これによって地域の雇用を生みだした事例をいくつかご紹介します。
(株)地域マーケティング研究所
代表取締役 吉田 潔
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