2009年4月、改正介護保険制度がスタートした。06年の大幅改正以来3年ぶりの実施で、とくに大きな改正はなかったというものの、介護従事者の処遇改善の緊急特別対策として介護報酬改定が盛り込まれた。介護報酬に関しては、03年のマイナス改定から数えて実に6年ぶりのプラス改定(全体で3%)となり、関係者の期待を集めた(03年マイナス2.4%、06年マイナス2.3%)。しかしその後、介護スタッフの処遇の改善に大きな変化はもたらしていない。業界は相変わらず人手不足と人材の流動化に悩まされている。原因は何か。改正介護保険制度を検証し、その理由を明らかにする。
<改定分は事業者の利益に>
介護保険における費用負担は、1割を利用者が、9割を保険で負担するという仕組みだ。その費用は、公定価格である介護報酬によって決定されることになるが、報酬が3%上がれば事業者の収入も3%アップすることになる。また、保険で負担する9割部分のうち、一定割合は介護保険料として被保険者の負担となるため、保険料や1割の利用者負担額にも影響がおよぶ。つまり、介護報酬のアップは事業者だけでなく、被保険者にも関係があるということだ。
このような制度の激変による被保険者の負担を軽減するため、国は1,154億円の国庫を拠出し、保険料の上昇を抑えるための制度設計を考えた。国がお金を出して、保険料が急激に上がらないようにする仕組みを制度として組みこんだのだ(図1参照)。国の拠出金は、改定による増額分の約半分に相当した。
仮に、介護報酬改定がなかったとした場合の介護給付費を100と考えると、全体で3%上がるということになれば介護給付費は103になるため、平均したら3%多く負担しなければならなくなる。今までの保険料が100円だったとしたら103円だ。
すると、103円で設定しなければならない保険料を3年間を通して毎年101.5円で設定することができる。また、1年目は上昇幅をゼロにして従来通りの100円に設定し、2年目の2010年度は半分を負担するように101.5円で設定する。3年目は103円をまるまる負担する。これは保険者に任せられているため、段階的に上がる地域もあれば、最初から3年間を通して101.5円とするところもある。保険料の上昇を抑える方法は保険者によって異なるが、いずれにしても被保険者の負担する保険料アップを抑えるための激変緩和措置として採用された。
福岡県では、「3年間を通じて平均的に同額を収める措置が講じられた」(福岡県介護保険課)ようだ。
【田代 宏】
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