経済が落ち込んだ日本では、雇用の創出が緊急に求められている。また、高齢化社会のなかで、とくに介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所申込者が多数に上っている。国が「経済危機対策」のなかで「成長戦略-未来への投資」として、「介護施設や地域介護拠点の整備に対する助成の3年間拡大」を09年度補正予算に盛り込んだ。しかし、十分な施設数と職員数が確保されているとは言えず、福岡県も対策に乗り出したものの、一定水準の整備まで先は長い。
<厚労省の愚策>
高度成長期に都市部に流入した団塊世代の高齢化が進んでいる。そこで介護・福祉施設が必要となっているが、06~08年度の3年間に新たに整備された介護・福祉施設は、土地の確保が難しい都市部で整備が進まず、計画の71%、ベッド数に換算して8.1万床にとどまったことが厚生労働省のまとめでわかった。自治体が定めた計画では、3年間にあわせて11.5万床を整備することになっていた。
都道府県別にみると、計画と比べて最も整備が進まなかったのは、京都39%、東京44%、千葉49%、滋賀53%、神奈川54%と関東や関西を中心に都市部で整備の遅れが目立っている。
この理由について厚労省は、都市部は地価が高く土地の確保が難しいことや、地域全体の賃金水準が比較的高いため、人材の確保が難しいことなどがあると分析している。
しかしその背景には、自民党政権時代の06年度医療制度改革関連法案による介護型療養病床の削減計画がある。診療報酬を3.18%、国は11年度末で廃止する方針を決定。ところが、大半の自治体では06~08年度に、計画上は介護型療養病床を全国で約8,700床増やすことになっていたが、実際には国の廃止方針を受けたかたちで約2.8万床減った。
当時、厚労省は介護型療養病床は他の介護保険施設や医療療養病床に転換され、高齢者の受け皿が削減されたわけではないと説明したが、民主党政権になって凍結されて今日に至る。
厚労省の愚策も相まって、高齢化が問題なのは過疎地だけではなく、むしろ都市部が深刻な事態に直面している。そのため介護・福祉施設は急ピッチで整備しなくてはならないが、現実は以上のようになっている。
【大根田 康介】
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