◆代表選は民主分裂の危機
小沢氏はすでに国対に「6月11日までに重要法案を成立させる」という指令を出している。連立相手の国民新党が力を入れる郵政改革法案と、社民党が求める労働者派遣法改正案であり、いずれも参院選の選挙協力を確実にするために成立させておかなければならない法案だ。
そのうえで鳩山首相が上海万博から帰国する6月12日以降に正式な退陣表明という手順になる。
後継首相選びは、参院選の日程を考えると、準備に1カ月ほどかかる党員投票ではなく、両院議員総会で決定される可能性が高い。しかし、この代表選は一歩間違えば民主党分裂につながりかねない危うさがつきまとう。
小沢側近議員の一部には、「この際、小沢内閣をつくるべき」という主戦論があり、その場合、仙谷由人・国家戦略相を中心とする反小沢グループが結束して岡田克也・外相や前原誠司・国土交通相を担ぎ、党を2分する争いが勃発するからだ。小沢氏が重用している原口一博・総務相らの若手を擁立したケースでも「親小沢Vs反小沢」という対立の構図は変わらない。
「両院議員総会なら小沢支持派の勢力が大きいが、党内には幹事長の複数区に2人以上の候補者を立てるという強引な参院選戦略への批判が強く、反小沢グループもかなりの勢力になる。反小沢派が党内の代表選に負けてもあきらめずに国会での首相指名選挙に候補を立て、自民党と組めば民主は大分裂、首相指名選挙が即、政界大再編になってしまう」(民主党中堅議員)
かつて自民党の大福戦争は、大平正芳氏と福田赳夫氏が総裁選を争い、そのまま国会の首相指名選挙に名乗りをあげ、同じ自民党から2人の首相候補が出るという事態に発展した。実際に、自民党にはそうした展開を期待して、「首相指名選挙で反小沢グループの候補に投票すべき」という声まであがっている。
◆参院選は「7月25日」に延期の公算
それだけに、小沢氏側近は、「参院選前に党を2分するような代表選は危険。ここは緊急避難で菅直人・副総理を総理に据え、大半の閣僚はそのまま再任してとりあえず参院選を乗り切るしかない」という。
菅氏は民主党結党時に鳩山氏とともに共同代表を務めたいわば党の創業者で、仙谷氏や前原氏ら反小沢グループの有力者も菅氏には頭が上がらない。副総理でもある「菅後継」なら、対立候補が立たずにすんなり承認される可能性が高い。当の菅氏も虎視眈々のようだ。菅グループ議員がいう。
「菅さんにとっては最後のチャンス。これが参院選後の代表選になると、小沢幹事長には若手を擁立して思い切った世代交代を進める選択肢があるし、それに対抗して岡田や前原も出馬し、菅さんの出番はなくなる。今なら岡田も前原も普天間問題の担当大臣として鳩山総理と連帯責任を負わなければならない立場だから、出馬資格はない」
確かに、普天間問題の処理で退陣を迫られている鳩山首相の後継者選びに、外相の岡田氏、沖縄担当相の前原氏が出馬するのは国民の理解を得にくい。
いずれにしても、これから鳩山首相の退陣を待って、民主党代表選、国会での首相指名と新内閣の組閣、さらに新首相の施政方針演説を参院選までに行わなければならない。6月16日閉会の予定だった国会の延長が必要で、参院選は「7月25日」まで延期せざるを得ないだろう。
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