<活性化が他の業界へ>
これまで、「約束された成長分野」として介護・福祉業界は捉えられ、いわゆる「投資」という観点からの参入も多かった。以前は介護事業を起業するためには大量の投資資金が必要で、中小企業では参入が難しいとされていた。しかし、そこに目をつけた投資ファンドなどが資金調達の支援をするなどした。オーナーを募り加盟金やロイヤリティをもらうことでノウハウを伝えるフランチャイズなどは、投資の最たるものだろう。
利回りを計算し、いかにミニマムな投資でいかに儲けるか、そのために入居者に対していかに安い価格で良いサービスを提供できるか。これらを追及するがゆえに、新築物件の場合、オーナーは必然的に工事業者には低い単価での工事を求めてきた。しかし、そうしたなかでも新たな潮流ができつつあるようだ。ある工事業者は次のように語る。
「社会福祉法人の発注の仕方も変わってきている。たとえば、以前はオーナーが元請10社に施設の図面を頼んだとしたら、それらはすべて画一的なもので、あとはどれだけ値段を下げるかの勝負だった。1億円かかる仕事を8,000万円で取ったとすれば、2,000万円とは言わないが1,500万円分くらい人件費なり材料費などを削らなければならない。
そうなれば当然、最後に困るのはオーナーになる。なぜなら、その分作業を簡略化したり材料の質が落ちたりしてしまうため、たとえば水漏れやひび割れなどが生じやすくなる。最悪の場合、建て替えという事態に陥りかねない。そうなれば相当の金額がかかってしまう。
そこで最近の流れとしては、オーナーは工事単価よりも利用者にとっての使いやすさなどを図面作成の段階から求めてくる。私は電気工事を元請から頼まれるが、たとえば10社に発注したもののうち3件くらいが別々のゼネコンからくるとすると、案件は同じなのに図面は十人十色の場合がある。昔は『本当にこんな価格でやるのですか』とこちらが心配するほど単価競争が激しかったが、今はむしろ企画提案力を求められているようだ」。
そんな同社も「社員のうち20%以上が企画提案をする部隊。当然、即カネになるものでもないが、そうした組織力を前もって身につけておかなければ、これから多様化する建主の要望に応えられなくなるだろう」と新たなビジネスモデルを模索中だ。
介護・福祉業界が変われば建設業界も変わる。こうした循環が他の業界にも波及していけば、日本経済も面白いものになるのではないだろうか。
【大根田 康介】
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