GW明けの5月7日、大内田建設(株)(本社:北九州市小倉北区、以下O社)の大内田薫社長と大内田昌副社長が建設業法違反の疑いで逮捕された。容疑の内容は、2007年、08年度の決算書を県に提出する際、虚偽の短期借入金を記載したという疑いでの逮捕だった。この時点で弊社は、「これで逮捕されるならば、建設業者の80%が捕まる。不当な別件逮捕だ」と指摘してきた。福岡県警の狙い=工藤会への資金流出封鎖の立件は、空振りに終わると見ていたからだ。
<逮捕事件は別件で同情される>
薫社長に対しての取り調べは暴力団との関係の追及、昌副社長に対しては筑豊の入札談合=汚職の追及があったようだ。結果、県警の当初の思惑は外れて建設業法違反での略式起訴による罰金刑で釈放された。大内田社長・副社長の二人はY新聞に対して「事実無根の記事だ。許されない」と怒っていた。この時点まではO社は、突如災難に襲われた被害者として「運が悪い」と同情される立場にあった。
金融機関は当然のごとく、「暴力団との付き合いの疑いがある企業には支援できない」という姿勢になった。O社の昌副社長は必死で弁護士との協力を得て「暴力団関係者との関係はなかった」ことを説明してまわった。その努力の甲斐があって、金融機関の見る目も少しは警戒感が解かれてきた。5月末の決済雰囲気を眺めるために本社に立った。たくさんの取引業者が集金にやってきていた。支払窓口はテンヤワンヤの状態にあった。
昌副社長に、今後の資金繰り状況についてコメントを求めた。「おかげさまで、月末はどうにかクリアできそうです。一部の仕入れ先には払いの半分で了解を得ました。残りは来月払います。また、一部の施主が来月払いの分を先払いしてくれて助かりました。現在の受注状況から見て、今年いっぱいの資金繰りのメドは付いたようです」と、ほっとした柔和な顔つきで語ってくれた。
ところがだ!!後述する(株)ビルドの工事代金の残金6億円のことは、まるで昌副社長の頭になかった。無事、回収できるものと踏んでいた。
このあたりから、「たまたま運が悪かった」という同情をされるものではなくなったのだ。運の悪さを己自身が引き寄せたという一面が、クローズアップされてきた。状況分析の甘さが露呈されてきたのだ。事実、昌氏から「ビルド発注の鹿児島のマンション工事代金が回収不能になる」という相談を受けたのは、6月の半ばである。「2週間前の5月末に『今年いっぱいの資金繰りのメドがついた』という証言は、一体何だったのか」という疑問が湧いてきた。
ただ、「一般債権者に対しては絶対に迷惑をかけられない」という責任感は、絶大なものであった。29日に「のほほん」と麻雀をしていたどこぞの社長とは、雲泥の差であった。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら