＜業者資格を取り上げられることに狼狽＞

　６月29日には、O社の自己破産申請の話が流れてきた。６月25日金曜日に建設業者登録が剥奪されるという福岡県からの通告を受けて、「これでは商売ができないから自己破産申請の選択しかない」と判断して一部の関係者に通告したという。この狼狽の背景には、６月末のビルドからの手形額面1.7億円の決済不能が明確になっていたこともある（合わせて６億円）。資金手当てのメドはつかないは、業者資格は取り上げられるはとなれば、我を忘れる気持ちには同情できるが、何か打つ手はなかったのか？
　かつてO社同様に県警から睨まれて、暴力団との関係を立件するために別件で逮捕されたA建設会社がある。この会社を取材してみた。まず、自ら大臣登録を有していた会社の、大臣登録の自主廃業の届けを出した。そして同時に、代表者を代えて福岡県知事登録の申請を行なった。許可が下りるまでに半年はかかったが、現在、この建設会社は支障なく運営をしている。「私の会社の場合は、同業者が仕事を回してくれる余裕があった。同業者はO社さんへ仕事を授けることはもう不可能だ。今後、大変だろう」と、A社のオーナーが心配する。A社と比較すると、O社のケースではどうも対策が後手後手に終始している。相談する弁護士が手ぬるいのかどうか知らないが、これでは運の悪さを粉砕できることもできない。

＜最後のとどめは鹿児島のマンションの案件＞

　６月25日から29日にかけて、昌副社長は生死をかけて破綻を食い止めるために奔走した。O社を生死の瀬戸際に追い込んだのが、マンションデベロッパーのビルド（本社・福岡市中央区、以下B社）である。O社への建設代金残金６億円を、未払い状態でいたのだ。６月末には1.7億円の手形は、当然のごとく決済されなかった。だからO社は、30日に１回目の不渡りを出した。昌氏が血相を変えて対策に講じているその29日に、B社の野津原社長は西鉄大牟田線薬院駅近くの麻雀店で息抜きしていたのには驚く。この無神経ぶりには、後述する販売不振に陥った心理状態に通じるものだ。
　B社は鹿児島市加冶屋町（市街中心部に位置する）に『ファンテージ加治屋町レジスト』を売り出していた。販売戸数は51戸で、建築確認を取った日が2008年９月１日、竣工日が2010年３月末、入居予定日が同４月末となっていた。鹿児島の市場は供給過多であった。「20％値引きが常識」というダンピング競争という厳しい販売状況があったのである。よって、最初から「この物件は高くて販売苦戦する」と関係者は予測していた。ボートで嵐の海に漕ぎ出したような暴挙である。これから述べる事実を知ったら、びっくり仰天するだろう。竣工した３月31日の時点で、正真正銘の販売戸数は１戸しかなかったのだ。
　B社の野津原氏をよく知っている同業者の社長が、呆れた顔をして語る。「関係者の相談を受けて、鹿児島のB社の物件の実際を知りました。竣工して１戸しか売れていないことを聞き愕然としたのです。あの販売力がある野津原さんが、どうして販売期間１年半の間に対策を講じなかったのか信じられません。20％の値引きでもすれば、半分は売れたはずです。魔が差したとしか言えません。こんなザマのない例は珍しいですね」というレッドカード発言だ。「素人の私でも、６戸は売れますよ」と掛け合い漫談をした。
　しかし、首をひねっても理解不能だ。販売期間１年半の間に、よくもまー１戸しか売れずに平然といられたものだ。野津原さんは、とっくの昔に投げ出していたのであろう。だから、麻雀にも興じられたのか。B社のことはどうでもよい。問題は、O社の対応である。無策で手をこまねいて、販売不振の物件を眺めていたとはどういうことか！！100％は行かずとも、半分でも売れた策は必ずあったはずだ。最初の運の悪さには同情するが、B社への応対は怠慢以外の何物でもない。運の悪さを自ら抱きかかえたと断言できる。

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