一人の幹部職員が、1億円近い公共事業を恣意的に進めた疑いが出てきた。
福岡市が市役所西口の広場に敷設した人工芝は、イタリア・モンド社が開発した「モンドターフ」。ヒートアイランド対策の一環として、天然芝と人工芝の効果を比較する実証実験など、敷設に至るまでの業務委託に約3,300万円の公費を投入し、人工芝敷設工事にはさらに約4,400万円を費やしていた。「モンドターフ」を敷設するまでの費用は約8,000万円にのぼったことになる。
平成20年に行われた「平成20年度 市役所西側『ふれあい広場』ヒートアイランド対策実証実験」の結果は、環境面では明らかに「天然芝優位」というもの。しかし、市側は「人工芝の優位性が認められた」などとして事実を歪め、市役所前広場におけるヒートアイランド対策では人工芝を使用していた。「天然芝はイベント開催時に傷む」との理由だったという。それなら実証実験など必要がなかったことになる。
8,000万円を費消した人工芝敷設は、無駄な公共事業だった可能性が高いが、その過程には、いくつかの問題がある。
まず、人工芝使用までの過程が、公文書として残されていないことである。福岡市として、ヒートアイランド対策に人工芝を敷設することを決めた折の決済文書が不存在であり、誰がどのような経緯で人工芝使用をきめたのか藪の中。公費支出の裏づけを残さぬまま、一連の事業が進められたことになる。
最大の問題は、実証実験の仕様書に「モンドターフ」が指定されていたことだ。天然芝と人工芝の比較段階で、特定企業の商品を指定することは極めて稀。単に「保水性人工芝」と指定すれば済むものを、わざわざ「モンドターフ」と指定したことで、競争の原則が崩されていたことになる。便宜供与との指摘が出てもおかしくない事態なのだ。
それでは、誰が「モンドターフ」使用を決めたのか。
経過をたどるなかで飛び出したのは、当時の担当課長の「私が決めた」との驚きの一言だった。巨額な公共事業が、一課長の恣意によって動かされたのである。
明日から、当時の担当課長とのやり取りを再現する。
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