<二転三転した選挙戦略>
民主党と社民党から推薦を得て、無所属で立候補した堤要氏は、当初、『無所属の市民派』を前面に押し出していた。鳩山前政権が、政治とカネ、普天間基地の移設問題などで支持率が急降下し、低空飛行をしていた頃である。ちなみに、公募で選ばれた堤氏は当選した場合、一定の無所属期間を経て、民主か社民のどちらかに属するか選べるようになっていた。
民主党関係者によると「社民党の組織票10万を土台に無党派層の票を上積みしていく」ことが堤氏陣営の作戦であったという。大久保氏と堤氏、ふたりの候補の住み分けがなされていたということだ。
ところが状況が変化する。普天間基地移設問題により、社民党が連立政権から離脱した。同党からも推薦を得ている堤氏は、複雑な立場に立たされた。そして、菅政権の誕生直後、一変して"民主党色"を前面に押し出す。
「菅首相は、市民運動の大先輩です。一緒に頑張りたい!」(堤氏)
その身替わりを分かりやすく示すのが、堤氏の選挙ポスターである。途中から貼り替えられたポスターには、大きく「民主党期待の女性候補」とある。これはもはや社民党への絶縁状と言っても過言ではない。民主党のほうも、本腰を入れて堤氏の応援に入る。そこには「支持率が回復した以上、大久保は大丈夫。あとは堤だ」という考えがあった。
しかしながら、新たに頼みの綱とした「V字回復」もアテにならなかった。消費税、安全保障、政治とカネなどに関する菅首相発言、選挙期間中にも関わらず枝野幹事長は他党に連携を呼びかけるなど、トップの迷走に支持率は再び降下し始めた。
【山下 康太】
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