<せめて3番手に>
選挙終盤、堤氏陣営の応援に入った党関係者は3番手ねらいに徹する。ただし、市民派で売っていた堤氏には組織票が無い。社民党の票も切り捨てた。どこから持ってくるか。やはり確実なのは、民主党支持者の票であった。
「堤陣営では、『大久保さんはもう当確ですから。堤に1票を』と党支持者に呼びかけている。相手さん(自民党)は、公明党との票のバーターに成功した。向こう(大家氏)のひとり勝ちが決まったようなものだよ」(民主党関係者)。党内からはそうした批判もあがっていた。
「トップ当選」を逃してはいけない。ふたり目が落選した野党候補の後塵を拝することになってはいけない。平行線をたどるそれぞれの思惑。挙句のはてに仲間うちで足の引っ張り合いを起こしてしまった。
結局、3番手は全体で10議席を獲得する躍進を見せたみんなの党公認候補、佐藤正夫氏だった。佐藤氏は、大差で敗れたものの第3勢力としてのポジションを示した。比例代表における政党票の獲得にも大きく貢献している。
みんなの党は、支部組織は設立直後、地方議員もいないという、ほぼゼロからのスタートで参院選を戦った。当初は、福岡県広域第1支部の石橋支部長自らが何千枚という選挙ポスターを貼って回るという圧倒的に人手が足りない状況だった。「選挙から政治を変えたい」と、訴える佐藤氏は、家族ぐるみの選挙を展開。選挙カーのマイク放送は、佐藤氏の長女が録音したテープを流した。
しかしそのうち、共感を覚えた人たちが、支持者となって次々に協力の手を差し伸べてきた。佐藤陣営にはボランティアが集い、ポスターの印紙貼りをはじめ、さまざまな活動支援を行なった。まさに「躍進」を感じさせる内容だった。
結果を見れば、選挙区は自民党に軍配が上がった(自民39、民主28、みんな3)。ただし、比例代表で民主党が獲得した16議席は他党(自民12、みんな7)よりも勝っている。選挙区における2名立候補戦略の失敗が結果に影響したという見方もできる。その背景に流れているのは、党内の不協和音だ。9月に党代表選を控える民主党。勢いを取り戻した自民党と、躍進のみんなの党、それぞれがどのような動きをとるか、今後の展開に注目である。
【山下 康太】
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