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(株)千鳥饅頭総本舗~内紛の鎮静化、そして新たな課題(下)
特別取材
2010年8月23日 08:00

 【(株)千鳥饅頭総本舗~内紛の鎮静化、そして新たな課題(上)】に続き、 (株)千鳥饅頭総本舗で何が起こり、問題となっているのかを述べていく。

 納入業者を訴えるが内部に造反者も

 事情を知る一部の地元の人は、千鳥屋が2つあることを知っている。しかし、一般消費者にはほとんど知られていない。当然、それぞれの工場で創られた製品の原料や製法が同じなのか、知ることはできない。親族の内輪もめを世間に知らしめる必要はないだろうが、製品について消費者を欺くことはできない。実は、もうひとつ一般消費者が知らない事実がある。
 千鳥饅頭総本舗は、材料の納入業者を06年に訴えている。内容は02年から04年まで本来の等級より低い原料を納入して損害を与えたというもの。09年3月に判決が下り、一部の主張が認められた。結果だけ見ると損害を被ったことになる。
 ところが、千鳥饅頭総本舗内部に、納入業者からリベートをもらってこれを容認していた社員がいたのだ。納入業者は、不正に至った経緯や金額を不服として控訴。責任は認めたものの、どちらからの提案で始めたかという点で強く反発した。ようやく和解に至ったのは09年12月である。結局、「等級が低い」原料を使用したことが、消費者に告知されることはなかった。
 上場企業ならば、訴訟になった時点で情報公開を迫られる。食に携わる企業の経営判断としてどうだったか。社風の判断材料となる。
 「贅肉を落とすことができた」とする同社は、今後10店舗程度の移転などを検討しているが、「とくに急いでやる必要はない」としている。しかし、商品政策、後継問題、組織整備など早急に解決すべき課題は多い。

【解 説】
(株)千鳥饅頭総本舗 一見すると兄弟が結束していて、先代時代とは異なるように思えるが、リーダーシップを誰が取るか不明確な分、舵取りはより難しい。また、不動産資産がウルズラ氏個人名義のままとなっていることで、相続や経営面で新たな火種を残している。何よりも、消費者が2つの千鳥屋を知らないことが問題であろう。世代が変わったことを旗印に、確執を乗り越えて「チロリアン」「千鳥饅頭」については共同開発・製造・マーケティング体制を敷くか。
この2つを捨てる、あるいはチロリアンに譲渡する覚悟で、新商品を開発して過去の看板商品依存から脱却するか。消費者へ告知せぬままの風土では新たな回復は望めない。群雄割拠するなかで、存在感はますます薄くなっていくだろう。
 たとえば「九十九島せんぺい」を有する九十九島グループは、法的手続き後に新たなスポンサーを得て福岡・長崎で積極的に商品開発を行ない、「博多まろん」「博多きゃらまん」など個性的な新製品も生み出している。ジリジリと後退する業績に歯止めがかけられなければ、資産が散逸する前に事業譲渡するのが最善の策となる。

(了)

【鹿島 譲二】

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