―市民の方々に対して、何か「こうしてほしい」という考えはありますか。
仙波 市民の皆さんには、政治に直接参加する姿勢を持ってほしいと思います。今は、市役所のことは市役所の職員に任せる、という方があまりにも多い。しかし、これからは市役所をスリムにしますから、皆さんには直接意見を言ってほしいんです。
―そういう場を設けることは考えていますか。
仙波 月に1回、議員だけではなくて、市民の方やマスコミの方も体育館などに集まって、全員で議論するような構想を練っています。もはや、そういう時期に来ているのです。そうすれば、市民の皆さんが議員の皆さんを厳しく監視することもできますから。
ご存じの通り、今は議員の方々と市役所の執行部が意見を交わす場所がありません。委員会や本会議はありますが、あんなものは議論ではなく儀式でしかないんです。だから、これからは、「何が公益か」ということを、何時間でも激論しなければいけない。どんどんフリートークをしなければならないんです。そういう場を、来月から提案していこうと思っています。
―その提案を、議会は受け入れると思いますか。
仙波 それは、やってみないとわかりません。ただ、今の議員の方々では難しいと思います。私が礼を尽くしてお会いしたいと言っても、会おうとしないわけですから。竹原市長が持っている哲学というか、価値観、公益観といったものに対して、反対派の方々がどれだけ理解を示してくれるのか。やはり、私としては複雑ですね。
―反対派の方々は、本当に理解した上で反対しているのでしょうか。
仙波 いえ、理解できていないんだと思います。ベテランの議員が反対している。じゃあ自分も反対しよう、という流れがありますから。
―そういう点では、仙波さんの愛媛県警時代と似ているところもありますね。
仙波 裏金の問題も、上司がやっているから自分もやろう、という流れができてしまっているわけですから、構造は一緒ですよね。
―リコールについて、竹原市長は「市民の方々が本気で市政について考えるようになってきた現れである」と言っていますが、仙波さんはどのようにお考えですか。
仙波 リコールというものは、国民の権利です。民主主義を実現するための、大きな目的意識のある行為なんです。ただ、それが一部の人々の既得権益を守るためのものになってしまう危険性はありますね。竹原市長の目的などを度外視して、住民の皆さんを作為的に先導する人が出てくる可能性もあるわけですから。
―リコールそのものではなくて、その内容が大切だということですね。
仙波 そういうことです。ただ、本当に大事な選挙は、竹原市長が政策をアピールできる本選挙です。リコールが成立するために必要な住民の署名でも、その後の住民投票でもありません。住民投票には、竹原市長が政策をアピールする機会がないんですよ。ですから、私はリコールを歓迎しているわけではありません。しかし、本選挙が行なわれる際に、竹原市長が自分のやっていることを自分の口で市民の皆さんに説明できる、こういう機会ができることはいいことだと思っています。
<プロフィール>
仙波 敏郎(せんば としろう)
1949(昭和24)年2月14日愛媛生まれ。愛媛県立松山東高等学校卒。67年、愛媛県警察官採用試験に満点で合格し、採用後最初の試験でもトップの成績を収める。73年には同期で最も早く巡査部長昇任試験に合格するも、裏金作りに必要として上司から依頼された偽領収書の作成を拒否。以後、定年まで巡査部長の階級に留まることになる。05年、現職の警官としては初めて裏金問題を告発。定年退職後は、裏金問題についての講演活動を行なう。10年7月、阿久根市長・竹原氏の専決によって同市の副市長に選任され、8月2日に就任した。著書に「現職警官『裏金』内部告発」(講談社)がある。
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