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地域づくりにマーケティング発想を!(6)マーケティングの定義
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2010年9月19日 08:00

 これまで、地域の現状やこれに対応した動き(直売所や地域振興のあり方)についていくつか事例を挙げてみてきましたが、ここで基本に立ち返って、マーケティングとは何かを考えてみたいと思います。
 1960年のアメリカ・マーケティング協会(AMA)のマーケティングの定義は、(1)「マーケティングとは、商品もしくはサービスを、生産者から、消費者もしくは使用者にまで流通させることに関する、企業の経営活動の遂行を意味する」と、いたってシンプルです。単に作った製品を流通に流すことといった内容です。筆者が大学生の頃は、まさにこの定義の時代であり、マーケティングという用語はもちろんあったものの、マーケティングの講義の名称は「配給論」「流通論」と言われていたものでした。
 次に、(2)「マーケティング(マネジメント)とは、個人と組織の目標を満足させるための交換を創造するための、アイデア・商品・サービスの概念化・価格決定・販売促進・流通に関わる計画と実行のプロセス」(85年AMA)と定義が変わります。これは、交換パラダイムと言われており、少し概念が広がります。
 さらに、(3)「マーケティングは組織的な活動であり、顧客に対し価値を創造し、コミュニケーションを行ない、届けるための、さらに組織および組織の利害関係者に恩恵をもたらす方法で、顧客との関係を管理するための一連のプロセスである」(04年AMA)という定義に変化します。これは、関係性パラダイムと言われ、企業や組織を取り巻くステークホルダーとの関係を重視する内容となっています。
 一方、我が国における現在の定義は、「マーケティングとは、企業および他組織(教育・医療・行政などの機関、団体などを含む)がグローバルな視野(国内外の社会、文化、自然環境の重視)に立ち、顧客(一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む)との相互理解を得ながら公正な競争を通じて行なう市場創造のための総合的活動(組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう)である」(㈳日本マーケティング協会、1990年)とされています。大変よく考えられた定義だと思います。現在の経営に欠かせないCSR (Corporate Social Responsibility)の要素も入っています。
 筆者自身は、もっと簡単に考えています。それは、「マーケティングとは、企業(その他組織を含む)活動を通じて、売れる仕組み、消費者・利用者、関係者が共感する仕組みを作り上げること」というものです。
 さて、このようなマーケティングの考え方が我が国に入ってきたのはいつ頃のことだとお考えでしょうか。筆者は、大学の講義や、社会人対象のマーケティング講座の際に、この問いを投げかけます。1950年代、60年代...と手を挙げてもらうのです。すると、もっとも多くの方が手を挙げるのが80年代です。若い方にとっては、30年も前のことですが、私の年代にとってはつい最近のことですよね。しかし、違います。正解は55年です。この年、日本生産性本部(当時)が、アメリカにマーケティングという考え方があるらしいとのことで、米国視察団(団長:石坂泰三日経連会長・東芝会長)をアメリカに派遣したのです。これが、我が国にマーケティングという概念が入ったはじまりです。そして、わずか2年後の57年には、日本マーケティング協会が設立されています。57年といえば、戦後の復興を果たし、我が国の経済が高度成長期にさしかかる頃です。まだモノ不足の状態が続き、作ればどんなものでも売れた時代です。それにもかかわらず、その時代にすでにマーケティングの概念を取り入れ、消費者や市場を志向することの大事さに目覚めていたわけです。
 さて、それから日本経済は高度成長の波に乗り、飛躍的な発展を遂げます。大量生産、大量消費の時代の到来です。それにつれて、マーケティング戦略も、製品志向→市場志向→消費者志向へと変化します。いくら大量消費の時代とはいえ、消費者に自社の商品が受け入れられるためには、どのようなマーケティング戦略をとるべきかが検討されたわけです。
 そのようなときに、我が国経済は冷や水を浴びせかけられます。そう、73年の「オイルショック」です。大量消費を謳歌していた消費者も、事の重大さに気がつきました。このままの消費生活を続けていていいのか、モノは十分にあるのか、石油は枯渇しないのか、と。
 ちょうどその頃、アメリカでは社会心理学者のダニエル・ヤンケロビッチ氏が消費者のライフスタイルについての研究をしていました。その考え方が日本に伝わってきたこともあって、我が国の消費者は、自分のライフスタイルを考えるようになり、企業もライフスタイル・マーケティングを展開するようになります。大量生産、大量消費時代への決別、本格的なマーケティング展開のはじまりです。

(つづく)

(株)地域マーケティング研究所
吉田潔氏代表取締役 吉田 潔
福岡市中央区天神4-9-10 正友ビル5F
TEL:092-713-2121
URL:http://www.mrkt.jp/


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