~早くも次の代表選に向けて走り出した前原、岡田、原口、樽床ら第2世代
◆「次の代表選」をにらんだ票集め
過去、現職総理が党首選で交代したのは、大福戦争と呼ばれた1978年の自民党総裁選で時の福田首相が大平正芳氏に敗れ、「天の声にも時には変な声もある」と退陣したケースくらいしかない。人事権とカネを握る現職総理は圧倒的に有利な立場にあるからだ。
菅氏も首相に就任すると「脱小沢」を掲げて片腕の仙石氏を官房長官、腹心の枝野幸男氏を幹事長に起用して党と官邸の金庫を握った。代表戦をにらんで小沢グループを権力から遠ざけたのは菅氏にすれば当然の戦略ともいえる。基礎票が少ない半面、人事権と官房機密費、党の金庫という「ポストとカネ」の配分権を握ることで多数派工作では圧倒的に有利な立場に立ったはずだった。
しかし、1年生議員の切り崩しにはそれなりの成果をあげた菅陣営だが、その後の支持が伸び悩んだのも事実だ。菅陣営は8日の緊急集会に「180人は集まる」と自信満々だったが、出席者は121人。その1週間前の総決起集会から7人しか増えていなかった。
慌てた菅陣営はローラー作戦をやり直し、10日に緊急経済対策を閣議決定すると、荒井聡・国家戦略相、平岡秀夫・副大臣、津村啓介・政務官の政務3役が説明資料を持って全民主党議員の部屋を回った。資料配布は本来、役所の若手の仕事であり、大臣自らポストマンを務めるなど聞いたことがない。
菅首相がそれほど苦戦しているのは、民主党内での評価が非常に低いからだ。菅支持派の7~8割は、「1年で3人も首相を交代させるのはどうか」というだけの消極的支持だ。
菅陣営の中堅議員はこういってはばからない。
「菅さんの政策や手腕には全然期待していない。小沢さんが出馬しなかったら無投票再選させないために菅陣営の若手・中堅で対立候補を担ぐつもりだった。小沢VS菅の比較論なら党運営の手法で菅さんの方がまだましだが、菅さんが続投しても政権は半年か1年で行き詰まるだろう。そのときにはいよいよ世代交代の代表選になる」
菅首相が再選されても2年の代表任期を全うできるという見方は党内には極めて少ない。
前原国交相、岡田克也・外相、野田佳彦・財務相らが小沢支持派の切り崩しにしゃかりきになっているのは、菅首相への忠誠心からではなく、「次の代表選」をにらんだ自分の勢力拡張のためだといっていい。小沢陣営でも原口一博・総務相、樽床伸二・国対委員長や松本剛明・議運委院長らが次々に勉強会を立ち上げて議員の囲い込みに動いている。
菅VS小沢という民主党第一世代の対決を通じて、もはや「世代交代」のうねりは止められなくなっているのだ。
自民党をはじめとする野党や大メディアには、今回の代表選での両陣営の激突が民主党大分裂につながるという期待がある。しかし、民主党の若手・中堅には「菅支持か、小沢支持か」の対立による怨念などなく、「次の次」の総理レースを視野に動き出している以上、政権を失いかねない分裂など起こりうるはずがないのである。
▼「菅続投」なら短命内閣、民主党分裂はない シリーズ一覧
・代表選の陰に「反創価学会宗教団体」の動き(1)
・「小沢ガールズ」をめぐる攻防(2)
・「次の代表選」をにらんだ票集め(3)
・「大臣手形」乱発のツケ(4)
・小沢「最後の巻き返し」(5)
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