<中小零細の苦境は『対岸の火事』>
「公務員給与は民間における賃金を考慮して決めるとなっているが、『民間の大企業のみの比較』とはなっていない。福岡市は98%が中小零細企業のまちである。そことの比較はどうなっているのか」(高山市議)。
市職員給与の元となる福岡市人事委員会(以下、市人事委)の職種別民間給与実態調査の対象が、大手企業に偏っていることを福岡市議会で指摘した高山博光市議(平成会代表)。さらに同市議は、同調査が不透明なプロセスで行なわれていることも指摘した。
市人事委は福岡市内の従業員50人以上の174事業所を対象に調査を行なっているが、その調査内容を例年開示していない。「公務員給与の原資は税金。その根拠を市民に開示しない、これほどの時代錯誤はない。堂々と開示するべき」と、同市議は強く訴えた。
対して、市人事委・事務局長は「事業所から提供された個別の調査結果はもちろん、事業所名もすべて極秘としており、『公開しない』という条件で調査を行なっているため、公開できない」との答弁をした。
市人事委が8日、市職員(行政職)の給与を月額0.34%(1,463円)、賞与0.2カ月分引き下げるよう吉田宏福岡市長に勧告したことが、各メディアで報じられた。一見もっともらしく聞こえるが、勧告通りに給与を改定しても市職員平均年収は約668万円である。
その根拠となったデータを市民に対して明らかにしようとしない姿勢は、不誠実としか言いようがない。
もっとも市人事委のスタンスは、国家公務員の給料水準を政府に勧告する人事院に拠っている。わが国には、どんなに財政状態が悪くとも、公務員が優良企業並みの給与水準を確保できるカラクリが存在するのだ。中小零細企業がどんな苦境に立たされていても、"彼ら"にとっては「対岸の火事」としか映らないのではないだろうか。
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