ある食品販売業A社で財務を担当する役員から、福岡における銀行融資の実態を聞いた。
「当社のメインは福岡銀行であり、サブは西日本シティ銀行である(以下、F行、N行と表記)。創業以来、赤字を出したことがなかった当社も、長引く景気低迷の影響を受けて2期連続の赤字決算が続いた。しかし、今年3月期には黒字転換し、2期連続赤字の『要注意先』から『正常先』に戻ったので、安心して融資が受けられると思った」という。
A社は今年6月、メインF行の賞与資金折り返しとN行の運転資金折り返しの期日が一緒であったため、事前に決算書類や銀行取引残高表など同等の資料を提出し、両行に6月20日過ぎの融資実行を依頼した。F行は約束の日に実行されたが、N行は一週間以上遅れて月末での実行となった。
その役員は、「メインF行の対応の早さと比較して、N行の対応の遅れに寂しさを感じると同時に、頼りにならない銀行の姿を見た気がした」と語る。
企業経営者は、必要な資金を必要なときに借入できる企業体質にする責任がある。しかし一方で、銀行も長い目で企業を育てる姿勢が求められている。今は銀行が企業を見放すケースが多いけれども、反対に企業から見放される銀行はいずれ消えゆくことになる。
企業も銀行も、本当の意味で生き残りをかけた厳しい競争が始まった、と言えるだろう。
【北山 譲】
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