松浦市の挑戦について、もう少し述べさせていただきます。
松浦市は、前回お話しましたように2006年1月、旧鷹島町・福島町と新設合併を行ない、新「松浦市」となりました。実はその2年前くらいから、先の2町を含む1市5町との合併計画が進行していたのです。その新市建設計画を私が携わって策定しておりました。その建設計画の策定に当たって、各自治体の企画担当者との合宿検討会があったのです。土日を使っての検討会で各種議論が進みましたが、どのようにして新市の振興を図るか、水産業は資源枯渇で沈滞気味であるし農業は平地が少ないため基幹産業とすることは大変難しい状況です。かといって、製造業が簡単に進出してくれるとは思えません。
日曜日の3時頃になって議論は煮詰まりました。そのような状態で、会議のメンバーからコンサルとしての私に意見を求められました。
私は、ホワイトボードの前に進み出ました。「みなさん、新市建設計画策定に当たってアンケート調査をしましたよね。その結果は、とにかく働く場がない、これを何とかしてほしい。高校生でも働く場があればこの町を出て行きたくない、というものでしたよね。では、どうしたらいいのでしょう?」。私は、ホワイトボードに「産業創造」と大書しました。そうすると、メンバーの方の反応は「そうよねえ。働く場いるもんなあ。でも、これを言ったら、やらんといかんもんねえ」とため息をつきます。そう、みなさん働く場が必要なことがわかっているのです。しかも農林水産業、製造業いずれも厳しいことも。では、どのようにして産業を創造するかです。それから議論が進みました。当然ながら1次産業、2次産業という従来の括りからは結論が出るはずはありません。そこで議論されたのが、観光の振興でした。
さらに、観光という第3次産業を核としてそれに関連するコミュニティ・ビジネス、ソーシャル・ビジネスの振興から新「松浦市」の産業を創造しようと考えたのです。そこで、新市建設計画にこのキャッチフレーズ「産業創造」が採用されたのです。ちなみに、現在の松浦市のサイトでも「次代をはぐくむ 産業創造都市 まつうら」と表現されています。
こうして新「松浦市」が船出し、観光や地域ブランド化により松浦市を売り出そうとした動きは前回お話しした通りです。
とくに前回もお話しした鷹島PRプロジェクトでは、ソフトバンク・ホークスとの連携によって鷹島を観光の島として売り出すのに躍起です。また、松浦市福岡都市圏プロジェクト・チームは、福岡市に事務局を置き積極的な活動を始めています。その一環として、今年2月に福岡市で「松浦市FAN倶楽部in福岡(通称:通風倶楽部)」というイベントが開かれ、松浦市に関係する福岡都市圏居住者を招いてのパーティが開かれました。友広松浦市長自ら、松浦市の海の幸、山の幸の特産物を紹介するなど大変盛況でしたが、私はその際友広市長に「このように男性、オジサン主体の会ではなくその奥様方、中高年の女性をお招きして同様の会を開催するべきではないでしょうか」と申し上げましたところ、市長はそうですか、よくわかりました、と返答されました。今のところ女性版第2弾は開催されていないようですが、ぜひ行なうべきだと思います。言わずもがな、女性の口コミ力は男性の数倍あります。また、女性の行動力=松浦市に行こう、も大変実現性も高いものがあるからです。女性たちを呼び込んでこそ、地域間交流の実現だと思います。
ところで、鷹島の道の駅「鷹ら島」では、豊富な海産物で集客をしています。道の駅開設に当たっては、飲食メニューの開発を行なっています。その人気メニューが「魚島来(おとこ)飯」です。漁師料理の提供です。また、ブランド名は忘れましたがおにぎりを魚の練り製品で巻いたものも開発しています。これが人気になって、福岡の旅行情報誌の九州道の駅特産物人気ランキングで1位になったこともあります。私が行ったときには、すでに売り切れでした。しかも、毎日作っているわけではないそうです。いい魚が入っていい練り製品ができたときのみ作っているそうです。これもぜひお試しください。
余談ですが、以前宗像市の道の駅ができる前、アクシス玄海に直売所がありました。そこの出口で聞いた二人連れの奥様の会話。「私、直売所で野菜や魚を買うのがものすごい好き(本当は、べたべたの博多弁だったのですが、再現が難しい)」「そう、そう。このときが一番幸せ。旦那とかいらんよ」。このように、直売所は愛されているのです。
余談ついでに、新市建設計画における自慢話を。南島原市(島原市の西側8町)の合併計画を提案した際のことです。企画提案段階において、「南向きに生きよう!」というキャッチフレーズを提案したのです。これが審査員に気にいられて採用されました。福岡の玄海(黒い海)ばかり見ている身にとって、島原半島の南にキラキラと光る海を抱く地域にぴったりとした表現だと思ったのです。審査員の一人は、「早速名刺にこのフレーズ使わせていただきます」と言われました。提案のしがいがありました。
(株)地域マーケティング研究所
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