長年看板事業に携わってきたA社は、ここ数年業績の落ち込みが激しく、本業での維持が困難となり、新たなビジネスで新境地を開拓している。
店舗などの軒先などに設置されている看板だが、1990年頃のバブル時代、それまでの看板よりも目立たないもののお洒落なスタイルに変化していった。しかし、その後は景気後退による消費低迷から各店舗も看板にまで費用が回らなくなり、看板製作が大幅に減っているという。
その傾向は今も続いており、同社と長年取引していた内装工事業者が「あの看板屋さんは以前取引がありましたが、ここ10年近くありませんね。看板の需要が減ってしまい、取引がなくなったようです」と語るなど、仕事の減少は著しいという。
しかも今は、営業力・デザイン力・制作力・施工力など、施主に要求されるハードルは年々高くなっている。しかし、中小・零細企業が多いこの業界で、そこまでの人材確保は難しい。「街中などで、『看板を書き変えたら良くなるのになぁ』と思うこともありますが、それでは『どのように変えて』『その効果がどれだけある』とかいうような具体的な提案力がないのが実情です。そのため、結局は下請けのままで仕事を待つ形です。これでは先行きがないと思い、新事業を始めました」とA社社長は語る。売上はピーク時の半分以下、従業員もいなくなり、新境地を探すしかないとの思いに至ったという。
業界では、ネットワークを結んでビジネスを拡大するなどの動きもあるが、A社のように見切りを付けて、新たなビジネスを始めるところも出てきている。
【石崎】
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