14日、投開票が行なわれた福岡市長選挙で、一部で注目を集めた激しい戦いがあった。それは、当選した高島氏と敗れた吉田氏の差が約6万5千票と大きく開いた一方で、わずか35票差となった塾講師・飯野健二氏(5,445票)と元人材育成会社講師・内海昭徳氏(5,410票)の最下位争いである。
通常なら泡沫候補同士の争いとして見向きもされないが、両者、対象的な戦い方をしており、今後の選挙運動、民意を考えるうえで特筆すべき点がある。
<ひとりの選挙運動>
ほぼひとりで選挙ポスターを貼るという前代未聞の選挙運動を繰り広げた飯野氏。「市民一人ひとりが大切」との考えから、可能な限り市内全域を貼って回った。告示初日は、第一声をあげたのち、ポスターを持って玄界島へ。翌日は志賀島。その後も、貼りもらしがないように、各区を回るときは、市や区の端から行なった。しかし、場所が分からず苦戦することも多かった。ポスター貼りと同時に福岡市全域を見て回った。「思っていた以上に市の現状は悪い」。住民目線の視察を行なった。
一方、内海氏は、講師時代からの若年世代の支持者が運動員となって熱心にサポートした。陣容は、市長候補として申し分のないものであった。選挙ポスター貼りもビラ配りも普通に行なえた。初日から街頭演説、個人演説会を積極的に展開した。活動量は有力候補に決して劣るものでなかった。
飯野氏と内海氏、両者が共通して関わった事件があった。RKB(毎日放送)の公開討論番組に呼ばれなかったことだ。同事件に対する両者の公での対応も両極端。記者会見やHP上で非難の声をあげた内海氏に対し、飯野氏は「気にしていない。得票数で見せつける」と、悠然と構えた。もっとも、裏では電話でRKB側に説明を求めてはいたが、表向きは動揺を見せることがなかった。
前市教育長・植木とみ子氏(61)の事件に関しても、両者の対応は異なっていた。植木氏がHP上で述べた「政治的圧力」を自民党のものと断言し、政党政治批判を始めた内海氏。一方、修猷館高校、九州大学で植木氏の後輩にあたる飯野氏は「お金(集めた寄付金)は返せても、支援者が支援に割いた貴重な時間は返せない」と、植木氏の姿勢に問題提起した。
【山下 康太】
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