古賀市長選に関連する政治活動において、会社がすでに閉鎖されていたにも関わらず、「民間会社の代表」という肩書を使ったとして、経歴詐称の疑惑をかけられている竹下司津男氏。前稿で述べたように、故郷・古賀市を離れてから十数年の足跡を知る者は少ない。では、そのような謎多き人物が、なぜ、古賀市長選で接戦の末に現職を破り、初当選を決めたのか。
古賀市の政治通は、ひとつの要因として福岡市長選の影響をあげる。「現職の中村氏が初当選したのは、福岡市で3期続けた桑原氏を山崎氏が破った直後。古賀市民は近隣の福岡市長選への関心が高く、その2週間後が古賀市長選だ。今回、36歳という若い高島氏が初当選したことは少なからず影響があった」。
福岡市における"戦後最年少市長の誕生"が、「市政の一新」がトレンドであると古賀市民に感じさせたのだろうか。今回の市長選では、当選すれば4期目となる現職・中村隆象氏の多選も争点となっており、42歳の若さを武器とする竹下氏は市民に新鮮なイメージを与えた。選挙期間中には、竹下氏の応援に高島宗一郎氏が駆け付けた。若い市長を迎えることに魅力を感じた市民も少なくはないだろう。また、自民党の応援を受けた高島氏の当選が、同様に自民党の支援を受けていた竹下氏にとって追い風になったことは間違いない。
一方、内的要因にあげられるのが、選挙の争点になった「市街化調整区域」だ。同区域は、古賀市の中央部および海岸部に位置し、面積は1,455ha(市総面積の34.6%)。市街化を抑制する区域として定められ、農地と農業集落を中心とした土地利用に限定されている。
この施策に対して、農家からは「制限で建物が建てられず、地価が下がる」などの批判の声があがっていた。竹下氏はこの「市街化調整区域」を批判。市長選の期日前投票における出口調査では、都市部で現職、農村部で竹下氏の優勢が伝えられたという。
竹下氏の初当選に働いたさまざまな追い風。それが、同氏の"ミステリアスな一面"をカモフラージュしたのではないだろうか。勤めた会社を2年で辞めた後の"空白の9年間"、「知らないうちに閉鎖していた」という民間会社など、多くの謎を持つ竹下氏に対し、「ミステリアスな男性に魅力を感じる」という乙女心のような動機で票が動いたとは到底思えない。
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