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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (9)
経済小説
2010年12月16日 10:47

<子会社ピーエムジェイの設立と破たん (1)>

「そしてピーエムジェイは・・・」
 黒田社長は自問した。

 1年前の平成13年8月、黒田社長はインターネットで部屋選びから契約までできるサイトを運営するピーエムジェイ(Property Market Japan)という子会社を設立した。
 設立の準備は私の前任の、社長室長の古田氏に指示した。古田氏は手際よく手続きを済ませた。初めての連結での業績開示も管理部長の尽力で行なった。そこまではいい。しかしその後、ピーエムジェイはいっこうに利益を稼がず、DKホールディングスからの貸付による資金援助も2億円になろうとしていた。
 ピーエムジェイの代表取締役は黒田社長が兼任していた。他に子飼いの岩倉常務と江口取締役が取締役に名を連ねていた。しかし、DKホールディングスの役員は皆、非常勤であった。黒田社長は岩倉専務を代表取締役に据えようとしたが、岩倉専務はこれを辞退したようだ。古田氏が連れてきたWEBデザイナー1人が唯一、常勤の取締役副社長としてピーエムジェイの運営にあたっていた。
 当時のDKホールディングスの社内に、敢えてピーエムジェイという火中の栗を拾おうという者はなく、平成14年3月期末のDKホールディングスの自己資本はわずか10億円。そのDKホールディングスがピーエムジェイに2億円の手出し、となれば会社の屋台骨が揺らぎかねない。退去後の改装工事をピーエムジェイ通しにして安定収入を確保させたはずなのに。

森村取締役は、オーナー担当チームを組織してサブリースの賃料改訂をする、といっていたが... 古田氏に立案させた計画に従って、経費の支出だけは予定通り続いていた。お客がひとりで部屋の下見ができるように遠隔操作の鍵を作った。「開けTEL君」という商品名で、金具でドア上に引っ掛けて、ドア上につっかえ棒を飛び出させることで空室に鍵ができる。遠隔操作のためには、NTTドコモの携帯電話の心臓部であるDoPaチップを埋め込んだ。そして、お客が下見に来たら鍵を遠隔操作で開錠し、内見のうえ部屋を決めてもらい、契約となればWEB上でクレジットカードを使って決済できるシステムである。この「開けTEL君」3,000個を発注する旨も承認されて、まもなく納品される。これもリースを組ませたが、今後6,000万円の手出しとなる。
 そして、古田氏は東京の上場準備企業に転職していった。

 私が古田氏に代わる社長室長として平成20年7月に入社したときのDKホールディングスの状況は以上のようなものだった。
 子会社だけではない。
 「九州で初めての、25億円規模の不動産ファンドを立ち上げ、やがてはJ-REITとして上場する」。そうぶちあげて仕入れてきた賃貸マンションの資金の融資返済期限が迫っていた。9月には終わらせないと、今後仕入れるための資金の調達が難しくなる。しかし8月になってもファンドの出資証券が売れない。この間のお取引先持株会でも営業がセールスしていたようだが...。営業部は、9月になって25億円分の物件を米系ファンドに一括して売りたいといってきた。これで切り抜けることを黒田は決断した。
 そして賃貸管理部では、過去数年間にお客に物件を売り、それらを皆サブリースで契約してきていたが、3年以上経過した物件の多くが逆ザヤになっている。つまりDKホールディングスがオーナーから借りる家賃よりも、入居者がDKホールディングスから借りる家賃のほうが安くなってきていた。これに対し森村取締役は、オーナー担当チームを組織してサブリースの賃料改訂をする、といっていたが、確かにそのための社員を採用しているのに、何も始めている気配がない。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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