毎週火曜と木曜に行なっているボランティアの清掃活動は18時に集合する。小生が参加した日は小雨が降る生憎の空模様。残念ながら若い女の子たちの参加がなく、彼女たちと和気あいあいとゴミを拾うという、よこしまな目論見は木っ端微塵に吹き飛んだ。もっとも「ボランティアは強制してはいけない」という土屋社長。あくまでも「奉仕の心」を学ぶ場を提供しているだけなのである。
もしかすると自宅よりも頻繁に立ち寄っているかもしれない中洲で、初めてのゴミ拾い。タバコの吸い殻がそこかしこに落ちていた。「これを始めてから、歩きタバコすることがなくなりました」と、参加していた男性従業員は語った。小生も日頃の行ないを反省。
しゃがみこんで吸い殻を拾いながら土屋社長は「うちの人材育成と一緒ですよ。いくら拾ってもまた捨てられる。いくらやっても人が替わるからやり直しになる。しかし、やり続けなければならないんです」という。人材の質という面でも、決して恵まれているわけではない。社会を知らず、今まで定職に就いていないような若者も多い。その場合は、一般常識、礼儀・あいさつから教える必要がある。それでも長く務める世界ではなく、人の入れ替わりが頻繁にある。
そのようななかで土屋社長が考えたのは、しっかりとした組織体制を構築することだった。今の会社の土台は、現在のオーナーがひとりで築き上げた。現場から事務手続きまでをひとりでやりこなしたという。その後を継いだ土屋社長は、さらに規模が拡大していくなかで人が替わっても支障がでないような組織作りを強く意識している。
人材育成に力を入れるMLHグループでは、派遣コンパニオンを利用しない。自前で育てた人材で、お手頃で質の高いサービスを提供するのが理想だ。それを聞いた小生が「つまりキャバクラ界のユニクロですね」と合点すると、土屋社長は「その通りです!」と痛快に笑った。近い将来、中洲発のキャバクラが海外進出する時が来るかもしれない。
「奉仕の心」を学ぶゴミ拾いのボランティアとは別に、スタッフの教養を高める活動も実施している。それが、高齢者ボランティアのガイドによる福岡、博多の史跡めぐりへの参加だ。前回は10月に行なわれ、店の女の子20人を含む計30人が参加した。
すでに2回参加した、しおりさん(中洲「月下美人」在籍)からは「福岡大仏を初めて知って勉強になりました。参加する前は、お客様からよく観光名所を訪ねられて困っていたけど、最近は感心されることが多いんですよ」と喜びの声。
「中洲ならでは」とは何か。そこを突き詰めていくことが中洲の接客サービスにおけるセルフ・ブランディングへとつながっていく。低料金を忘れさせるような付加価値のあるサービスの実現へ。本当の価格破壊を起こすための戦いが、中洲で始まっていた。
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長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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