民主分裂で菅政権に突きつけられる「内閣総辞職」か「解散・総選挙」の選択。――理念なき政界再編の時代への逆戻りは許されない
2011年はおそらく今後10年の日本政治の行く末を決める年になる。「政権交代可能な2大政党政治」が曲がりなりにも定着するのか、それとも再び「政界再編」という名で政党が合従連衡を繰り広げる混乱の時代に逆戻りするのか。鍵を握っているのはひとえに民主党が分裂するかどうかである。
1年3カ月前に有権者が政権交代を選択したとき、「これでバラ色の政治が行われる」と期待したわけではない。社会保障制度の崩壊、経済低迷、不安定な国際情勢と内憂外患を抱え、経験不足の民主党が政権を担うのだから、混乱は覚悟していたはずだ。だが、それにも程度がある。今では、「こんなはずではなかった」というのが国民の正直な気持ちではないか。
民主党政権は鳩山内閣に続いて菅内閣も政権運営に完全に行き詰まった。2代の内閣で民主党は政権担当能力がないことを見せつけ、年末政局は「小沢除名」や「大連立」の動きが交錯する末期的症状に陥った。
しかし、民主党政権の罪は、「国民の期待に応えられなかった」ことではない。せっかく実現した政権交代可能な政治を、分裂によってぶち壊そうとしていることにこそある。
<菅政権に「地方の反乱」>
菅政権の置かれた状況は、10年前の森内閣とそっくりだ。
森首相は腹心の中川秀直・官房長官がスキャンダルで辞任に追い込まれた後、「神の国」発言や『えひめ丸』の沈没事故での危機管理対応を批判されて支持率が急落していった。
菅内閣も柳田前法相の失言や尖閣問題など外交・安全保障で失敗を重ねて支持率が急落、政権の大黒柱である仙谷由人・官房長官が参院で問責決議を可決され、1月の通常国会前に仙谷更迭と内閣改造は避けられそうにない。
そして、森退陣の決め手になったのは、東京都議選をひかえた都議たちの反乱だったが、菅政権も来年4月に統一地方選をひかえ、すでに「地方組織の反乱」が始まっている。
民主党は統一地方選に過去最大の候補者を擁立する。ところが、前哨戦ともいえる福岡市長選で敗北した。これを皮切りに、松戸市議選、茨城県議選では惨敗している。それだけに、地方組織からは「これでは全員討ち死にしてしまう」(現職県議)と危機感は尋常ではない。民主党東京都連は12月8日に菅首相と執行部に、「地域で活動しているわれわれが罵声を浴びせられ、時には唾を吐きかけられる。このままでは選挙を政策論議で戦えない危機的状況にある」と失言続きの幹部の綱紀粛正を求める申し入れを行なった。鳩山グループ幹部は、「来年1月13日の民主党大会では地方の代表者から菅おろしの声が噴き上がる。それが首相交代のきっかけになる可能性があると覚悟しておかなければならない」と新春政変を視野に入れた言い方をする。
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