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政界インサイドレポート

民主党分裂、岐路に立つ日本政治(2)~政界インサイド・スペシャル
政界インサイドレポート
2010年12月14日 08:00

<社民と自民の「二兎を追う」菅の迷走>

 窮地に追い込まれた菅首相は国会乗りきりのために矛盾する2つの行動を取った。そのことが混乱に一層拍車をかけている。
 福島瑞穂・社民党党首との電撃的な会談でいったん連立を離脱した社民党の政権取り込みに動いたかと思うと、一方で「大連立」論者の与謝野馨『たちあがれ日本』共同代表、森喜朗・元首相らと相次いで会談。それにあわせて「政界フィクサー」の渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長が谷垣禎一・自民党総裁に民主・自民の大連立を呼びかけた。
首相官邸 参院で過半数がない菅政権は、1月からの通常国会で自民・公明を中心とする野党が予算関連法案に反対すれば来年度の予算執行ができなくなり、絶体絶命の状況になる。社民党との連携は、自民・公明が参院で予算関連法案を否決した場合、衆院の「3分の2」で再可決するための多数派工作だ。いわば最悪の事態に備えた保険である。
 しかし、その代償は大きい。福島氏は菅政権が進めていた「武器輸出3原則」の見直し(緩和)に強硬に反対し、菅首相、仙谷官房長官、北沢俊美・防衛相は社民党を取り込むために見直しを断念した。3原則緩和は、日米が共同開発しているミサイル防衛(新型迎撃ミサイル)の欧州配備や次期主力戦闘機F-35の米欧共同開発に日本が参加するために必要な措置で、米国側が強く要請していたものだ。見直し断念によって日本の安全保障強化は大幅に遅れる。
 さらに普天間基地移設についても、福島氏は「政府案」に強硬に反対しており、政権運営の大きな火種になる。

 外務省幹部の指摘だ。
「朝鮮半島の南北軍事衝突で日米同盟の強化が欠かせないときに、社民党との連携路線は大きな障害になる。対中国外交で失敗した菅政権は、今度は対米外交でも同じ轍を踏もうとしている」。

 民・自「大連立」の動きが急浮上したのも、菅首相と社民党の提携で政権が一層「左傾化」して国の安全保障が空洞化してしまうことを恐れるあまりの反作用だ。
 菅首相は、その大連立にも片足をかけた。森元首相との会談に続いて麻生太郎・元首相をブラジルの大統領就任式に政府特使として派遣する方針を決定。通常なら、与党の鳩山由紀夫・前首相を派遣すべきところなのに、わざわざ自民党に花を持たせた。
 そのうえで、自・公が要求する小沢一郎・元代表の国会招致を多数決で強引に決めるように岡田克也・幹事長ら執行部に指示を出した。明らかに「小沢グループを切り捨ててあわよくば大連立」への布石である。
 菅首相にすれば、「社民党か、自民党か、どちらかを抱き込めばなんとかなる」との計算だが、いくら何でもご都合主義すぎる。
 自民党は最初から泥舟の菅政権との大連立に乗る気はなく、菅首相に「小沢切り」をやらせて民主党を分裂に追い込むのが目的だ。しかも、民主分裂となれば、たとえ社民党の協力を得ても衆院の3分の2の勢力はなくなる。
 まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」で政権は行きづまる。そうなれば、内閣総辞職か、解散・総選挙の道だ。

(つづく)
【千早 正成】


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