<金融行政への提言>
米国の商業銀行がリスクテイクに走った1980年代、米国独自の金融規制により米国内の商業銀行が国際競争力を失わないよう、金融システムの安定化などを目指し、BIS規制が導入された。
市場リスク規制や新BIS規制を導入し、商業銀行の社会的機能は、一般の営利法人とはその公的側面からも、一定の区分・区別が図られることとなった。
一方日本国内においては、96年から01年にかけて「金融ビッグバン」という金融制度改革が行なわれ、過去の「護送船団方式」とたとえられた銀行の横並び体質が崩壊し、金融機関同士の「競争」という概念が、一層激化した。
02年以降の「第二次金融ビッグバン」において、保険や証券の代理業務も解禁され、この規制緩和を切っ掛けとして、金融機関の「フィー・ビジネス」推進は、加速度的に発展していった。
そもそも金融機関はその社会性や公共的機能より、持続的なビジネスモデルでなければならない。その他のいかなる業種よりも、業界そのものとしてゴーイング・コンサーンが求められ、長期的視野に立てば、ユーザー側の利益は、「長期持続的な資金供給体制の継続」にあると考える。
現在の市中金融機関の営業推進を考察すると、(1)投資信託販売(2)個人年金保険販売(3)個人向け国債販売(4)外貨預金獲得(5)連結子会社クレジットカード獲得(6)与信先(兼役員出向先)クレジットカード獲得(7)定期預金・定期積立獲得(8)住宅ローン獲得(9)信保付融資獲得(10)事業性貸出金獲得、などの多岐に渡るノルマ項目が設定されている。
中小企業の金融円滑化に必須な「資金供給」を「制度」として設計し、そこに発生する競争原理に対応するために個別採算を下回った取引を継続的に行う。これが市場にとって、本来的な金融機能の発揮と呼べるのかに疑義が残る。
「リレバン」の制度上の目的は、「育成型金融」にある。「金融機関のコンサルティング機能」を発揮し、中小企業とのリレーションの強化を図り、情報量の蓄積を図る。これらの活動は、他行比上回る金利プレミアム部分を吸収し得る、付加価値的活動に繋がるものである。
金融ビッグバン以降の金融機関同士の競争環境の激化は、長期的に考察した場合、必ずしも健全な市場形成には寄与しない。自由競争を基本的には推進する立場にあって、金融市場における自由競争のこれ以上の推進は、マクロ経済としてそのインパクトが大き過ぎると考える。BIS規制の導入は、米国商業銀行のリスクテイクを抑制する目的で導入された。日本国内においても、過当競争を防止する一定の法制度・枠組みを設計することを提言する。
金融機関出身者の誰もが、みな口を揃えて同じ発言をする。「金融機関は、預り資産業務に走り始めた頃から、その歯車がおかしくなった」と。
本業(貸出金利息収入)でカバー出来ない収益をフィー・ビジネスで吸収するのではなく、適正金利の確保を目指し、適正金利が受け入れられるようなビジネスモデルの展開を望む。
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