<本当の「電子書籍元年」 メディアの変化は10年遅れ>
―来年、注目されるキーワードを3つ挙げるとすれば、何がありますか。
佐々木 1番は「ソーシャル化」です。ソーシャルメディア上でテレビの情報がやりとりされることで、テレビが見られるようになりました。あるいはお店などは、今は「食べログ」のような口コミサイトが検索の入り口になっていますし、そうした情報が劇的にソーシャルメディア上で流れています。だから、情報収集のツールとして考えると、やはり「ソーシャル化」が大きなキーワードですね。
2番目は「タブレット」です。2010年は「電子書籍元年」なんて言われていましたが、まだまだ読める本は少ないし、タブレットもiPadくらいしか出ていません。ただ、国産の書籍のプラットフォームが2010年末から年明けにかけて次々に登場・販売されるでしょうし、タブレットもたくさん出てきて電子書籍も増えるだろうと考えると、本当の「電子書籍元年」は2011年中ということになります。
3番目は「ロケーション」です。ロケーションの通知サイトというのがすごく盛り上がってきています。「フォースクエア」というiPhoneのアプリを起動して「自分の居場所をチェックイン」というボタンを押すと、GPSで自分の居場所が友人にツイートされたり、自分がいる場所の情報が表示されたりします。
また最近だと、ニューヨークに「フードトラック」というタコスなどを売っている屋台があるのですが、彼らがツイッターをやっているケースが非常に増えています。これまで屋台といえば、どこにいるかもよく分からないし、1回買ったらそれっきりの関係だったのですが、ツイッターで今日はどこどこにいますと流すことで、どこにいるか分からない屋台とお客さんがエンゲージメントしてしまうという状況が起きています。
あとは、一昨年から始まったグーグルストリートビューも、最近では不動産業界などで導入されています。たとえば「スマイティ」では、物件の情報にストリートビューを見るボタンがついています。何のメリットがあるかと言えば、間取り図を見ただけでは土地柄がよく分からないですが、ストリートビューだと同じ視点で平準化して表示されるからウソがつけません。
―今、中小企業経営者の方は見えない先行きに対してもがきながらも、こうしたメディアを使ってセルフブランディングしているところが増えてきました。
佐々木 そうでしょうね。昔の枠組みそのものが崩壊してしまっているから、今の枠組みがどうなっているのか実はよく見えません。でも、10年ぐらい経ってようやく仕組みが変わったことに気づいて、メディアの変化が10年遅れくらいで来ているのではないかと思います。これからはサッと変わりますよ。それについていけるかどうかで、企業が生き残れるかどうかが決まるでしょう。
【大根田 康介】
<プロフィール>
佐々木 俊尚(ささき としなお)
1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政経学部中退。88年毎日新聞社入社。99年アスキーに移籍し、『月刊アスキー』編集部デスク。03年退職し、現在フリージャーナリストとして主にIT・ネット分野を精力的に取材する。総務省「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」委員。「2011年 新聞・テレビ消滅」「Google グーグル」「電子書籍の衝撃」など著書多数。
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