目指すは「観光ビジネス都市」 ハウステンボスを変える経営者魂
<ハウステンボスと日本、その共通項>
―今、日本全体が閉塞感に包まれています。こうした状況を打破するには、一人ひとりがどのような心構えでいれば良いでしょうか。
澤田 何も難しくありません。嘘でも構わないから、自信を持てば良いのです。一番良くないのは自信をなくすこと。今、この国にとって悪いことは若い人が自信をなくしていることです。人間って、失敗したり経済が悪くなったりして先が見えなくなったら、どんどん自信をなくします。私が若い人に「どんな人生でも失敗もあれば問題もあるし、うまくいかないときもある。そういうときこそ明るく元気に楽しくやれ。一番大切なのは、嘘でもいいから自信を持ってやることだ」といつも言っています。
人間というのは、そんな簡単には習慣や文化は変わらないものです。だから何回も言葉で伝えて、少しずつ変えていかなければ仕方ありません。ハウステンボスのスタッフは、今まであまりものを考えなかった、あるいはそういうチャンスがなかったのではないでしょうか。そういう人に考えさせる。すぐにはできないでしょうが、徐々に変えていくしかありません。
何とか一気にやろうと努力するけれど、まだ結果に表れていないから、2010年は57点という評価です。ここだけで1,000人くらいのスタッフがいますから、大変と言えば大変です。しかしHISグループは、HIS本体で約5,000人、海外やグループをあわせて約8,000人の規模です。
大きなことを言えば、今の日本経済の情勢はハウステンボスの財務状況と似たようなもので、少し前のハウステンボスを大きくしたのが今の日本のようなものです。つまり、日本の縮図がハウステンボスと言っても過言ではありません。無駄が多い、その割には売上が下がっている、日本も収入は40~50兆円しかないのに、毎年100兆円弱も使ってだんだん借金が増えています。
でもはっきり言って、日本はアジアの憧れの地ですから。食事はおいしいし、自然はいっぱいあるし、それぞれクオリティが高い。それはハウステンボスも同じで、訪れた海外の観光客は口をそろえて「きれいなところだ」と評価してくれます。たしかに私も、日本のなかでもすごくきれいだと思います。だから、「東洋一の美しい街にします」と言っているのです。
佐世保でも福岡でも、少し外に出れば電線と広告看板ばかりですが、ハウステンボスにはそれらが目立つところに1つもありません。都市として見れば、そうは思いませんか。テーマパークとして見るから当たり前に見えますが。
ここはモナコと同じ広さがありますし、観光ビジネス都市として考えれば、こんなにきれいな都市はアジアにはありません。日本でもこれだけのきれいな街ないですよ。普通は電線がありますし、看板がありますし、ゴミは落ちていますし。
<プロフィール>
澤田 秀雄(さわだ ひでお)
1951年、大阪府生まれ。73年に旧西ドイツ・マインツ大学経済学部に留学。在学中に世界50カ国以上を旅行する。帰国後の80年、新宿にて旅行会社(現:(株)エイチ・アイ・エス)を開業。95年3月店頭公開。96年、オーストラリアに「The Watermark Hotel Gold Coast」をオープン、会長に就任。また同年、スカイマークエアラインズ(株)(現:スカイマーク(株))を設立し、98年に国内航空業界への新規参入を果たす。99年、協立証券(株)の株式を取得し、エイチ・アイ・エス協立証券(株)(現:エイチ・エス証券(株))の代表取締役社長に就任。03年にはモンゴルAG銀行(現:ハーン銀行)の取締役会長に就任。04年、エイチ・エス証券(株)を大証ヘラクレスに上場させる。同年、(株)エイチ・アイ・エスは東証一部に上場。現在は澤田ホールディングス(株)の代表取締役社長、(株)エイチ・アイ・エスの取締役会長の他、経団連理事、経済同友会幹事、アジア経営者連合会理事長も務め、10年4月ハウステンボス(株)代表取締役社長に就任。
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