目指すは「観光ビジネス都市」 ハウステンボスを変える経営者魂
<九州の本当の良さを周知することが大事>
―最後になりますが、九州は観光という面で経済の活性化を図ろうとしています。この動きについて、澤田さんはどのようにご覧になっていますか。
澤田 とにかく九州は観光の宝庫ですよね。もうすでに観光資源はたくさんあります。各地の温泉や阿蘇山など、自然もたくさんあります。歴史もあるし、食事もおいしい。だから、今さらまたお金をかけていろいろやるよりも、これらの優秀な資源をいかに知らしめるか。これが下手なのだと思います。
その次はやはりアクセスですね。来たくても航空便がない、値段が高いということになれば、本当は近いのに遠いのと同じことになります。たとえばビートルを走らせたら、韓国との交流が増えたでしょう。観光に大切なのはアクセスで、それが素材に磨きをかけます。いくら素材だけ磨きをかけても、来ていただかなかったらどうにもなりません。
この近くでは、嬉野が良い温泉ですよね。だけど、東京の人はほとんど知らない。実は私も知りませんでしたが、良い温泉なのは間違いありません。車ならハウステンボスから50分で行けますが、今は直行バスが走っていません。だから行くに行けないのです。電車では行けますが、乗り継ぎがあり不便です。交通のコラボレーションがとれていません。嬉野温泉には、年間100万人以上の観光客が訪れると聞いています。昔はもっといたようですが、慰安旅行がなくなってからはどんどんさびれていったのでしょう。
温泉はすばらしい、旅館もすばらしい、食事も美味しい、だけど昼が楽しくない。何もないから。夜の食事と温泉だけ。でも、近くにハウステンボスがあるじゃないですか。ここで楽しんで、嬉野に泊まった人が翌日またここに来るという選択肢があっても良いと思います。500円くらいの直行バスでもあれば来るでしょう、ということで直行バスも始めようと思います。
「九州って知っていますか?」とタイ人に聞いても、10人中9人は知りません。長崎は原爆が落ちたことで名前は知られていますが、何があるのかは知りませんね。まずはやはり、国内外を問わず九州の本当の良さを知っていただく。いくら素晴らしいものがあっても、知らないと誰も行きませんよね、九州が結束して、九州の本当の良さを内外にアピールすることがまず一番だと思います。
<プロフィール>
澤田 秀雄(さわだ ひでお)
1951年、大阪府生まれ。73年に旧西ドイツ・マインツ大学経済学部に留学。在学中に世界50カ国以上を旅行する。帰国後の80年、新宿にて旅行会社(現:(株)エイチ・アイ・エス)を開業。95年3月店頭公開。96年、オーストラリアに「The Watermark Hotel Gold Coast」をオープン、会長に就任。また同年、スカイマークエアラインズ(株)(現:スカイマーク(株))を設立し、98年に国内航空業界への新規参入を果たす。99年、協立証券(株)の株式を取得し、エイチ・アイ・エス協立証券(株)(現:エイチ・エス証券(株))の代表取締役社長に就任。03年にはモンゴルAG銀行(現:ハーン銀行)の取締役会長に就任。04年、エイチ・エス証券(株)を大証ヘラクレスに上場させる。同年、(株)エイチ・アイ・エスは東証一部に上場。現在は澤田ホールディングス(株)の代表取締役社長、(株)エイチ・アイ・エスの取締役会長の他、経団連理事、経済同友会幹事、アジア経営者連合会理事長も務め、10年4月ハウステンボス(株)代表取締役社長に就任。
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