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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (29)
経済小説
2011年1月 7日 10:54

 銀行側の雰囲気は、挨拶はそこそこに、早く本題に入ってほしい、という様子であったが、岩倉社長は、札幌でのオフィスビルの売買事例の切抜きを見せて、本件の利回りも問題ない、というような話をしていた。そこで、私は、きりのいいところであらかじめ作って社長の了承を得ておいたレジュメを鞄から取り出し、岩倉社長に差し出した。岩倉社長も気持ちを切り替えて、レジュメに沿って経緯説明を始めた。
GC注記への配慮というコメントに少しだけ安心して福岡に帰った... 内容は、建築確認申請が取れ即座に着工することが可能だが、当初想定した証券化は難しくなっていること。米系投信会社からの購入意向は仲介業者から得られているが、買い手の資金調達が不調で契約延期を迫られていること、その他商談先はあるが、いずれも6月中の売買契約締結は困難であること、などである。そのため、現在融資してもらっている土地部分に加えて建物部分の枠を作っていただき、竣工までの面倒を見てほしい、というのが要望事項の主旨であった。

 もちろん、これが簡単に通るとは考えていなかった。しかし、都銀が20億円クラスの融資の意思決定をするには1カ月間というのは非常に厳しいスケジュールであるため、とにかく単刀直入に要望を出さざるを得なかったのである。

 単刀直入な要望に対する、都銀側の回答もまたすでに準備されたもので、単刀直入であった。まず、竣工までの融資は、当初より想定しておらず、ありえない。しかしながら「上場会社に対してGC注記(ゴーイング・コンサーン―継続的企業―の前提に関する注記、経営危機が迫っている危険信号として認識される)がついたりして倒産の引き金を引くようなことはできたら避けたいので、期限延長は検討する。だからとにかく資金繰計画を示してほしい」とのことであった。
 その日は、GC注記への配慮というコメントに少しだけ安心して福岡に帰った。

 2度目の折衝ではより詳細な資金繰り計画を持参しての説明となった。
 その後、改めて東京支社で各物件の販売状況と資金繰りを銀行側に説明し、その後、経理部長が呼び出されて追加担保を要求されたが、それでも1カ月の延長を引き出すのが精一杯であった。これにより、私は、毎月借り換えをしないと会社の資金繰りを維持できない立場におかれることとなった。

 いっぽうで、この物件の資金の他行肩代わりについてもいくつかの打診を行なっていた。しかし、天神南部の大型土地が動かなければ無利といわれ、どこも応じるところはなかった。次善の策としてノンバンクに借り替えられないかと考え、大手のコリックスにも打診していた。すでに、不動産会社の多くが銀行からの融資を受けられなくなり、ノンバンク資金に頼っている状況であった。当社は、一度、外資系ファンドとのつきあいてGPACの資金を借りたことがあるくらいで、ノンバンクには頼らないという矜持があった。しかし、転ばぬ先の杖という観点から検討していたものである。
 が、これも金利はアップフロントフィーも含めて出来上がりで8%以上といわれ、しかも評価額がまったく不足であった。
 もはやノンバンクも事実上、不動産への融資は手控えており、可能なのは物件の売却のみであることが改めて確認された。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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