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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (32)
経済小説
2011年1月10日 08:00

<平成20年3月期決算>

「ところで社長、今期の物件がまだひとつしか受注となっておりませんが... 3月期決算の上場会社は、3月末の終了とともに決算作業に入る。その後、約3週間であらかた会社としての試算表を仕上げる。その後、山陽監査法人の公認会計士が決算のチェックを行なう。そして、ちょうと5月の連休の頃、監査法人内の「審査会」にその会社の監査結果が報告され、了承が得られれば監査法人としては、その決算が適正である旨の意見書が出せるようになる。
 DKホールディングスの場合は、連休中の審査会で資産表に関して了承を得られたら、その内容をワープロで作成する決算短信および有価証券報告書に落とし込み、原則として決算期間の終了から45日以内ということで5月15日前後のきりのいい曜日に決算発表を行なう運用としていた。

 4月下旬、監査に入るにあたり、2名の担当会計士が岩倉社長宛来社した。挨拶に加え、監査手続きの一環として、経営者とのミーティングを行ない、状況を把握しようというのである。山陽監査法人としても、複数の不動産関連企業の監査を行なうなかで、今進行している不動産不況は予想以上に厳しい、という認識を持ちつつあった。

「ところで社長、今期の物件がまだひとつしか受注となっておりませんが、近々にいくつかの物件が売れる、という可能性はありますか」
 と公認会計士。
「う~ん、わからないね。今、銀行がカネを出さないんですよ」
 と岩倉社長。
「しかし、今期用の物件は、石川さんに聞いたところでは昨年の4月に1棟が売れて以来、もう1年間受注がないそうですが」
「確かにこれまでのように簡単ではないけれども、購入意向は来ています。大丈夫です」
 他愛のないやり取りではあるが、会計士としては、十分に厳しさを認知したはずである。

 経営者には、株主や取引先に対して、公正妥当で一般に認められている会計方針に則って経理を行ない、適正な開示を行なうことにより、投資や取引に必要な判断材料を提供する義務がある。これを実現するために、経営者は、監査法人に自社の会計の監査を委託し、所属する公認会計士がこれに当たる。会計士に求められるのは、会社経理に対するけん制機能である。この期待に応えるため、会計士は敢えて時には、経営陣へのヒアリングを行ない、また時には会社の経理に苦言を呈しながら、必要な修正を指導する。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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