<市民の知る権利の拡大強化>
今回は、「市民の知る権利の拡大強化」についてお話します。この項目は、第3セクターなどに対する情報公開に関するもので、最も評価の高い部分です。市民の公開請求権がおよぶ範囲を市の外郭団体や補助金団体などへ拡大するために、「情報公開協定」という方式を全国で初めて導入するなど、先進的な手法を活用して市民の知る権利の拡大強化を図りました。
具体的には次の5つの法人や団体の情報公開を強化しました。
I 地方三公社について
II 地方三公社以外の市の出資法人について
III 市が多額の補助金などを交付している団体について
iV 市が多額の経費を負担する実行委員会について
V 市が加入する一部事務組合など地方公共団体の組合について
この分野においては、一方で、上記の法人などの自主性や独立性を尊重しながらも、他方では、これら法人などの情報公開の実効性を担保するという、二律背反的な大きな課題が横たわっていましたが、「市の関与の度合い」に応じて次のように取り扱うこととしました。
I 地方三公社について
「地方三公社」(土地開発公社・地方道路公社・地方住宅供給公社)については、特別法に基づいて、市と一体となって公共性の高い事業を行うことを目的として設立される法人であることから、最も市の関与が強いものとして、条例上の実施機関として定め、原則公開の義務、非公開情報の適用範囲など市の機関と全く同様に取り扱うこととしました。(ただし、福岡市の場合は、福岡県と北九州市と共同で福岡北九州高速道路公社に出資していますが、福岡県が主たる出資団体となっており、市が単独で設立した公社は、土地開発公社と住宅供給公社の2公社しかありません)。
この地方三公社は、それぞれの設立法において、その出資者は地方自治体に限定され、その理事長などは地方自治体の長が任命することとされています。出資者が地方自治体に限定されていることは、その事業内容が地方自治体に準ずる公共性を有していることを意味するものであり、地方三公社の理事長等が地方自治体の長により任命されることは、その組織上の最も根幹的な部分を地方自治体が統制することを意味しています。
このように地方三公社は、実質的には地方自治体の一部を構成するとみることができ、財団法人、社団法人、株式会社など他の出資法人とは異なり、その独立性を議論する実態が存在しないのです。むしろ、市と同様に、その諸活動を支える資金の出資者である納税者=市民に対して説明責任を負うべき存在なのです。
この地方三公社は、国で言えば独立行政法人や特殊法人に相当するもので、国においても、独立行政法人などを対象にした情報公開法が平成14年10月から施行しております。現在では、他の自治体でも、地方三公社を情報公開条例の実施機関と位置付けるようになってきています。
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<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制
係長などを歴任し、2010年8月に退職。在職中は、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。
<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援
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