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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (34)
経済小説
2011年1月12日 15:20

平成20年7月「大型土地の売却」

<大手系不動産会社からの購入意向>

 非常に厳しい市況であったが、DKホールディングスが在庫していた土地のなかで福岡市都心部の国体通りに面した土地について、大手企業系の不動産会社から購入意向があったことは先に述べた。当社の資金繰りの構造は、不動産の売上がないと月間1億円ずつ資金が減っていくようになっていたため、不動産がなかなか売れない環境では、資金繰をつけることは困難であった。しかし、大手企業が国体通りの土地を「50億円で買う」というのである。
 DKホールディングスは、この土地を仕入れるために32億円の資金を銀行から借りていた。したがって、この土地を50億円で売って、銀行にその借入金を返せば、十数億円の資金の余裕が生まれる、という計算であった。

当時、不動産市況は厳しかったもののリーマンショック前であり... 私は、一も二もなくこの商談を何とかまとめてほしいと願った。
 その当時、不動産市況は厳しかったもののリーマンショック前であり、まだ全面的な信用収縮には至っていなかった。世界には行き場を失った投資マネーがあふれ、これらのマネーや原油や貴金属などの商品市場の高騰を招いていた。このため不動産もそろそろ割安感も出てきていて、財閥系や大手企業系のキャッシュリッチな不動産会社の買いが入って、ある程度のところで下げとまるであろう、という意見も根強く、実際、信託銀行系のアナリストがそのような分析を述べた本を出版していた。その矢先に大手企業系の不動産会社からの買付意向であり、社内はこのことで大いに明るくなった。
 私は、何とかその売却を6月の19日までに完了させてもらいたいと思った。
 と、いうのも毎月20日がDKホールディングスの支払日であり、このままでは6月20日に資金が不足になる可能性があったからである。また、6月末までに決済できれば、この土地の売上が第1四半期の実績として計上されるため、投資家や銀行の目もかなりよくなるのではないかと考えたからである。
 それに会社の業績には波のようなものがあり、ひとつが売れれば、おのずと他のものも売れてゆく傾向がある。これは、物件が売れることで営業のモチベーションが高まるからだろう。

 しかし、大手企業ゆえに、商談は相手先の社内決済に時間を要し、しかも売買契約は決済当日にしか締結できず、しかも決済は8月になる、ということであった。
 そのため、私は6月20日および7月20日の支払は、いくつかの取引先に依頼してその支払を翌月まで繰延せざるを得なかった。また、仕入れた物件の不動産取得税や固定資産税を一部滞納することもした。これらをしながらひたすら国体通り土地の決済が完了するのを待った。
 相手先は、DKホールディングスの足元を見て、途中3億円の値引きを要求してきた。これまでどおりの環境であれば受ける話ではないが、今回は、それも受けざるを得なかった。これらの結果、8月8日に当該土地の売買が成立することとなった。


〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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