III 市が多額の補助金などを交付している団体について
次に、「市が多額の補助金などを交付している団体」についてです。
出資法人と同様に、税金の使い方に関する説明責任(アカウンタビリティ)の要請が強く働きます。
そこで、年間5千万円以上の補助金などを受ける団体を「財政支援団体」として取り扱うこととし、出資法人と同様に情報公開協定方式を採用しました。
しかし、出資法人の場合と異なり、この団体の設立などに市は関与しておらず、団体の自主性・独立性については、相当程度配慮する必要がありますので、協定対象文書の範囲は、市関与法人と同じレベルに狭くしました。
IV 市が多額の経費を負担する実行委員会について
次に、「市が多額の経費を負担する実行委員会」についてです。
財政支援団体と同様に市が5千万円以上の経費負担をしており、かつ職員の派遣など人的支援を行なっている実行委員会を「事業支援団体」として取り扱うこととし、情報公開協定方式を採用しました。当時、該当する団体としては、アジア太平洋都市サミット実行委員会、福岡アジア文化賞実行委員会、新福岡空港調査会などがありました。
事業支援団体は、市(行政)の関与がかなり強いので、協定対象文書の範囲は、市監理法人と同じレベルに広くしました。
V 市が加入する一部事務組合など地方公共団体の組合について
最後に、「市が加入する一部事務組合など地方公共団体の組合」についてです。
今、大阪府の橋下知事たちによって立ち上げられて話題になっている「関西広域連合」もこの組合に含まれます。
地方公共団体の組合は、組合自体が特別地方公共団体として独立した存在であり、議決機関である議会を持つことができますので、自ら情報公開条例を制定することが本来の姿です。このような組合の独立性はかなり強く、外郭団体と同様に取り扱うことはできません。
しかし、組合の活動経費は、構成団体の公費すなわち税金によって賄われている以上、説明責任(アカウンタビリティ)の要請は強く働きます。また、当時福岡市が加入している7つの組合で、情報公開条例を制定している団体はありませんでした。そこで、福岡市が加入する地方公共団体の組合に対し、その保有する情報を公開するよう協力を要請することを条例に明記(条例第40条)しました。
このように、地方三公社に始まり、第三セクター、補助金団体や実行委員会、地方公共団体の組合まで、総合的な拡大型の情報公開制度を設けた条例は、当時、全国でも初めての試みで、有識者や関係者から高い評価を受けました。
<プロフィール>
寺島 浩幸 (てらしま ひろゆき)
福岡県立修猷館高校、福岡大学法学部法律学科を卒業。1987年に福岡市役所入庁後、総務局法制課、人事委員会任用課、情報公開室係長、市長室経営補佐係長、議会事務局法制係長などを歴任し、2010年8月に退職。在職中は、主に法律関係の職務に従事するとともに、市長直属の特命業務や議員提案条例の支援を担当するなど、市長部局と議会事務局の双方の中枢業務を経験。
現在は、行政書士事務所を開業して市民の身近な問題の解決をサポートするとともに、地域主権の要となる地方議会の機能強化を目指し、議員提案条例アドバイザーとしても活動中。
<主な実績>
・日本初の協定方式による第3セクターの情報公開制度の条例化
・日本初のPFI事業(タラソ福岡)の破綻再生
・日本初の「移動権(交通権)」の理念に立脚した議員提案条例の制定支援
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