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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (40)
経済小説
2011年1月20日 11:22

 収益面では、これも以前より言われていたことであるが、銀行が不動産に金を貸しづらい状況は当面続くと考えられたため、これまでのように不動産を仕入れて、それを売るやり方から、不動産の売買を仲介して手数料だけをいただくというやり方に切り替えていくことが求められた。何しろ、市場では次から次へと不動産会社が破たんしている。破たんした会社からはうんと値引かれた形で不動産が売りに出る。当社は、これまで福岡を中心に1棟1~3億円の不動産をぱっと買うような富裕層をがっちり押さえていたので、このように安値で叩き売られる不動産を仕入れずとも、顧客に仲介することで十分な収益を得られると考えられたのである。
この頃の各銀行の一様の動きのひとつは担保権の強化であった... しかし、これもすぐさま販売活動の考え方を切り替えることは難しいと予想された。開発業であれば当社は物件の売主としての立場となるため、販売は仲介会社に任せてのんびり構えることもできた。しかし、仲介の場合は、まず売り手をしっかりグリップし、常に物件が動いているなかで売り手と買い手がクロスオーバーする瞬間を捉えて動かねばならず、求められる機動力がまったく異なるからである。

 それでも、不動産に銀行融資が出ない状況が続く以上、ほかに選択肢はない。不動産売買の世界で生き残ってゆくには、仲介に乗り出すしかなかった。そのようにして直面する危機を乗り越えつつ、12月までに在庫を処分してバランスシートをきれいにする。その後は、個人向けの小型物件の供給に絞って再出発する。それがダメであれば、不動産販売の部門自体をなくしてしまうよりほかなかった。

<抵当権本登記への切り替え>

 この頃の各銀行の一様の動きのひとつは担保権の強化であった。
 市場環境がよかった頃は、不動産担保融資の担保設定は「仮登記」で済んだ。このほうが当社にとってはコストが格段に安く、しかもこの方法でも債権者にとっては抵当権の第一順位が保全される。したがって、経済環境が良好なときは、当社の融資も大半が仮登記であった。しかし、仮登記では、万が一の時に即座に抵当権を実行(担保土地を競売に付するなど)ができない。このため金融環境の悪化とともに、各銀行は不動産会社に対して、仮登記の抵当権を本登記に切り替えるよう要求する動きが始まった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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