<不二一体の 国政と地方行政>
基本条例は、自治体運営の基本理念および住民、議会、行政の協働による街づくりの基本ルールを定めたものとして、各自治体とも内容はほぼ同じだ。たとえば「市民」についての定義は、「市内に住む者」「市内で働く者、学ぶ者」「事業を行う者」などとなっている。
問題は、基本条例に基づく住民の行政参加の仕方である。基本条例を持つ自治体の多くが、住民投票条例も定めているか、ニセコ町のように基本条例そのものに住民投票を盛り込んでいるところもある。生駒市も09年に基本条例を制定、それに基づいて投票条例の制定を企図したもの。
そこで問われるのが、投票資格者だ。生駒市は昨年11月から12月までに投票条例案への意見募集したが、そこで投票資格者に外国人が含まれていることが知られたのだろう。
しかし、すでに外国人も有資格者とする自治体が少なくない。広島市は「永住外国人」、川崎市は「永住外国人」および「日本滞在3年超」など、それぞれ若干の違いはあるものの、投票条例で外国人の投票権を認めているところは全国で20団体以上はある。
また、先のニセコ町のように、基本条例そのもので住民投票制度を設け、有資格者についてはそれぞれの事案によって定めるところ、さらに岩手県宮古市のように有資格者は「市内に在住する18歳以上」のみとしか定めていないところもある。「基本条例を制定した07年当時、技術研修生以外には外国籍を持つ定住者はいなかった」(宮古市議)という事情もあるが、これから定住者が出てきたり、彼らを支援するグループによって権利主張される可能性がなくはない。
それというのも昨年1月、千葉県市川市議会で「地方参政権付与に反対する意見書」の採択について、総務委員会では賛成5、反対4の僅差ながら賛成多数となり、翌日の本会議にかけられた。
ところが、本会議ではそれまでの賛成派が反対にまわり、意見書は葬られた。宮古市のようなところはともかく、外国人の多い大都市やその周辺都市では、参政権に代表される権利主張する外国人、あるいはそれを支援する民主党や社民党、公明党員が多い。
先の鳩山氏は1月11日、民団の新年会に出席して、再び地方参政権付与への努力を表明している。
しかし、「在日」と言われる韓国籍の特別永住者、永住者には、昨年から本国での選挙権が与えられている。「国政と地方は違う」というのが地方参政権付与論者の主張であり、投票条例に外国人を有資格者とする自治体の姿勢と同じだ。すなわち「外交、防衛問題などと自治体独自の問題は別」という論法だが、普天間問題で揺れる沖縄県名護市の現状はどうか。民主党政権も辺野古移設を認めざるを得なくなったが、地元では反対派首長が誕生してネジレ現象に苦悶している。
「地方主権」は重要だが、世界のなかの日本という視点からは「国政と地方行政は不二一体」である。とりわけ重くのしかかってくるのが、中国人の永住、定住者の急増だ。彼らが条例に基づいて住民投票権を得ていけば、地方自治は誰のためのものになるか。参政権運動も、民団をはるかに凌駕するのは間違いない。それが是か否か。有権者も候補者も国際感覚が問われる。
恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。
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