＜行事がまわしをつけて土俵へ上がる？＞

　候補擁立の目処がつかぬまま年を越した福岡県知事選挙。政権与党として初めての統一地方選に臨む民主党だが、菅内閣の支持率低迷という逆風の影響もあってか選考は難航。一方、自民党は地元紙の一面を飾った元特許庁長官の話が頓挫。どちらも未だ見通しの立たない状況。つまり、４月10日の投開票まで残り３カ月を切ろうとしているなか、表立って立候補意思を表明したのが、民主党福岡県連前代表の古賀一成衆議院議員だけということになっている。

　古賀氏が出馬意思を言及したのは、2010年11月３日に開かれた民主党福岡県連の知事選候補者選定委員会。選考する側の人間が前触れもなく唐突に名乗り出たことに対し、県連幹部の多くは唖然としたという。しかも、時は福岡市長選（10月31日告示）の真っ最中。民主党が推薦する吉田宏前市長の応援に訪れた民主党・岡田克也幹事長からは「行事はまわしをつけるな」との苦言が呈された。当時、「古賀一成出馬」の目はほとんどないと、県連幹部は口をそろえていた。
　古賀氏の知事選出馬がないとするのは、同氏を取り巻く状況によるものだ。09年の衆院選当選後、古賀氏の後援会が解散。10年８月23日、元事務所長が不当解雇を受けたとして、古賀氏を提訴した。とても有権者の支持が得られる状況ではない。ただし、かねてからの悲願と、古賀氏本人の意思は固い。
　しかしながら、候補選考が年を越すに至るや、にわかに出馬の可能性が高まっているようだ。ある県連幹部は「このまま他に候補が見つからなければ、ありえない話ではない」と語った。それが昨年末の話―。

＜平成の龍馬が福岡市に進出？＞

　ちょうど同じ頃、妙な話を耳にした。新党結成にわいた昨年３月、「平成の龍馬になる」と単身自民党を離党した鳩山邦夫元総務大臣が、福岡市内で事務所を探しているというのである。鳩山氏は、久留米市を中心とする福岡６区選出の衆議院議員。久留米市は、鳩山氏の母方の祖父、ブリヂストン創業者・石橋正二郎氏の出身地である。
　福岡６区では、古賀氏と熾烈な戦いを繰り広げた。東京から、『石橋家』という強力な地盤がある同選挙区へ国替えした鳩山氏は、05年の衆院選（第43回）で古賀氏を破って当選。続く09年の衆院選（第44回）でも民主党への追い風吹くなかで古賀氏を破り当選（古賀氏は九州比例ブロックで復活）した。

　また、事務所探し以外の行動でも、鳩山氏の最近の動きは気になることが多い。年末のテレビ番組では、幼女４人連続誘拐殺人事件の犯人・宮崎勤元死刑囚の死刑執行について、当時の法相だった鳩山氏が直接、執行の検討を指示したと告白。「あと30～40人は執行しておくべきだった」といった爆弾発言を連発し、話題を集めた。12月29日には、たちあがれ日本・与謝野馨共同代表と東京都内で政界再編について会談。動向への注目は高まっている。
　国会では、無所属議員として宙ぶらりんの状態が続いている鳩山氏。ここで国政の場は御子息に譲り、母方の故郷に錦を飾ろうという野望を持ったとしても不思議ではないだろう。

　はたして、鳩山氏の福岡市進出の意図とは？
　まさか、古賀氏出馬の可能性は？

　そんなことを考えながら、大晦日の夜に眠りにつくと、桜咲き誇るなか、鳩山氏と古賀氏が街頭で演説合戦を行なう様子をあわただしく取材するという夢（悪夢？）を見てしまった。
　しかし、これは一概に「夢オチ」と言えないかもしれない。福岡県の人口は約500万人、世界に目をやれば同規模の国が十数カ国ある。福岡県知事の重責は、人口だけで言えば小国の首相に匹敵するレベルだ。誰もがおいそれと出れるような選挙ではない。残り約３カ月―。選挙規模（有権者数）を考えると、これ以上遅れれば県全体へ周知して回るのにとても時間が足りない。現時点で何らかの表立ったアクションを起こしている人物がいないのは不自然。新しいリーダーに、自ら名乗り出る人物が少ないのも、ひとりの県民として寂しい限りだ。

＜追記＞
　きょう（６日）、鳩山邦夫事務所に福岡市における事務所探しの件について問い合せた。鳩山氏秘書いわく「その話は初耳」という。はたして誰が福岡県知事選に名乗りをあげるのか、ますます気になる。

【山下　康太】

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